高エネルギーイオンによる高温プラズマの自発的流出入を発見 核融合科学研究所ら

核融合科学研究所は2024年6月24日、九州大学およびデンマーク工科大学と共同で、大型ヘリカル装置(LHD)において、高エネルギーイオンの状態を制御することで、高温プラズマの流出入の量が自発的に決定されることを発見した。

核融合研究において磁場で閉じ込められたプラズマの性能は、その密度や温度、プラズマの過熱に大きく影響される。核融合炉の高性能化のためには、プラズマ粒子や熱を確実に閉じ込め、核融合反応が生じるプラズマの中心部の密度と温度を高く保つ必要がある。しかし、LHDでは電子密度の分布が平坦か中心がくぼんだ状態になる場合が多く、中心部の密度を高く保つことができないという課題があった。

LHDでは、プラズマを加熱するための中性粒子ビーム入射加熱装置が設置されているが、その内3台が磁場に対して接線方向に入射、その他2台が同垂直方向に入射し、これにより高エネルギーイオンがプラズマ中で生成されてプラズマを加熱する。その接線入射ビームと垂直入射ビームの電力の比率を変化させたところ、イオンの温度分布は変わらなかったが、電子には、ピークした密度分布と平坦な密度分布が存在することが分かった。

高エネルギーイオンの接線と垂直の比率を変えることは、速度分布を等方的な分布から非等方な分布に変化させることになるが、入射ビームによって生じる垂直成分と平行成分のそれぞれの蓄積エネルギーの比(垂直/平行比)の密度分布形状との依存性を調査した。その結果、垂直/平行比を0.3~0.8の範囲で非等方性を変化させると、垂直/平行比<0.4では平坦な電子密度分布、垂直/平行比>0.4で中心がピークした電子密分布になることが分かった。

これらは、高エネルギーイオンの状態によってプラズマの流出入量が自発的に変化することを意味しており、さらにシミュレーションによって、この現象には乱流が関連する可能性があることが示唆されたという。

今回の発見は、高性能プラズマの生成や、核融合炉の小型化、核融合出力の向上、また、プラズマ燃焼状態の制御に貢献することが期待されるという。

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研究成果(プレスリリース) / ニュース 核融合科学研究所

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