筑波大学は2023年12月7日、理化学研究所などとの研究グループが、大型放射光施設SPring-8の測定装置などを使って、圧力の変化でガラスの性質が大きく変化する相転移という現象の仕組みを解明したと発表した。相変化メモリなどの高度化への貢献が期待できる成果だとしている。成果は12月7日、Nature Communicationsに掲載された。
温度や圧力を加えられた物質が液体から固体に変わったり、構造が変わったりすることを相転移、相変化と呼ぶが、液体を急速に冷却すると凝固点を過ぎても結晶化せずに過冷却液体となり、さらに冷却すると硬いガラス状態になる。
こうしたガラスは温度や圧力の変化で性質が大きく変化するが、相転移する際の原子配列の変化については、まだ解明されていなかった。
研究グループは、SPring-8にある小角・広角X線散乱測定装置「BL05XU」での高輝度の放射光X線を使った高圧回折実験と、分子動力学シミュレーションを組み合わせ、圧力をかけたときのガラスの原子配列の変化を調べた。
その結果、大気圧のもとで見られる「パイエルス様歪(ひずみ)」と呼ばれる規則的な原子の配列が圧力の上昇とともに抑制され、それにともなってガラスの体積弾性率が上昇することが明らかになった。このようなメカニズムは、過冷却液体がガラスへと相転移する仕組みと本質的に同じであることも分かった。
このことは、パイエルス様歪がガラスの性質を左右する本質的な構造的特徴であることを示すものだとしている。
加熱と冷却によって、結晶とガラスのいずれかの状態になる物質を相変化材料と呼び、相変化はブルーレイなど光ディスクの記録膜などに使われている。研究グループは、相変化材料を使った記憶媒体を高度化する材料の開発につながることが期待できるとしている。
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相変化メモリの高度化につながる、圧力下でのガラス相転移機構を解明 | テクノロジー・材料 – TSUKUBA JOURNAL