グリーンな水素製造のための触媒を求めて――MIT、機械学習で材料表面の原子構造を予測する手法を開発

Credits:Image: MIT News

マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが、材料の表面構造を原子レベルで予測できる、モンテカルロ法と結合した機械学習法を開発した。多成分系材料の表面における原子分配や原子配列に関して、存在し得る膨大な数の組み合わせの中から、自由エネルギー最少の最も安定な表面原子構造を特定できるものだ。高速かつデータ効率に優れるため、計算コストを抑制でき、触媒や半導体、バッテリーとして最適な化合物や合金の開発に活用できると期待されている。研究成果が、2023年12月7日の『Nature Computational Science』誌に論文公開されている。

カーボン排出のないグリーンな水素を大量に製造するため、新しい触媒材料の研究開発が活発化しており、高い触媒効率を得る触媒材料の表面構造の理解が重要になっている。材料の表面特性は原子構造のどの部分が露出するかによって異なり、どのように周囲環境と相互作用するかは、表面における原子の分配や配列によって大きく変動する。レーズンやナッツが入ったパウンドケーキをどのように切るかによって、切断面に異なった量と配列でフルーツが露出するのと似ている。

これまで、新しい触媒材料を設計する場合、経験豊かな研究者の直観に頼っていた。実際の材料表面を把握する場合でも、直観と知識に基づいて幾つかの特定な表面を設定して解析する場合が多い。理論的に言えば、多成分系材料の表面における原子構造を予測することは、電子構造の第一原理計算により表面エネルギーを計算し、自由エネルギー最少の最も安定な表面構造を求めることによって可能である。だが、存在し得る膨大な数の原子分配や配列の組み合わせについて計算することは理論的に可能であっても、「計算コストが膨大になり現実的ではない。特定の幾つかの事例を調べることはできても、全体像を得るには不充分」と、研究チームは説明する。

研究チームは、マルコフ連鎖モンテカルロ法を活用して自動的に選択された幾つかの原子分配や配列の組み合わせから出発し、第一原理に基づいて原子間ポテンシャルを計算して、インタラクティブな機械学習プロセスにより、数百万の全ての可能性の中から自由エネルギー最少の最も安定な表面構造を特定することにチャレンジした。その結果、5000回より少ない第一原理計算によって高速かつ高いデータ効率で達成できることを確認した。

実証例として、GaN(0001)やSi(111)およびSrTiO3(001)の安定な表面構造を予測したところ、従来の研究結果と一致していることが判った。「触媒や半導体、バッテリーとして使用できる新しい化合物や合金の開発に活用できる」と、研究チームは期待している。更に、作動過程における表面特性の経時的変化に関する動的情報も予測でき、例えば、触媒の化学反応促進過程やバッテリー電極の充放電過程などを推定できることを示した。研究チームは、開発した機械学習法をAutoSurfReconと呼び、世界中の研究者がダウンロードして使えるように広く開放しており、「他の研究者によって、グリーンな水素の製造や二酸化炭素の分解など、さまざまな分野で活用されるのを待ち望んでいる」と語っている。

関連情報

MIT engineers develop a way to determine how the surfaces of materials behave | MIT News | Massachusetts Institute of Technology

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