- 2024-5-29
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- タタ基礎研究所, ニュートン乱流, リンパ液, 北欧理論物理学研究所, 弾性乱流, 沖縄科学技術大学院大学, 生体液, 研究, 血液, 非ニュートン流体
沖縄科学技術大学院大学(OIST)は2024年5月27日、同大学とインドのタタ基礎研究所、スウェーデンの北欧理論物理学研究所との共同研究グループが、弾性乱流と古典的なニュートン乱流との間に多くの共通点が見られることを発見したと発表した。
血液やリンパ液といった生体液の多くは、応力とひずみの関係が非線形となる非ニュートン流体だ。生体液は、弾性乱流という流体運動を表す。水のような液体に微量のポリマーを添加した際に発生するカオス的な流体運動を指すもので、非ニュートン流体でのみ生じる。川の水が橋の柱を高速で通り過ぎる際などに生じるのは古典的なニュートン乱流で、これを記述して予測する数学的理論が存在する。一方で、弾性乱流の記述や予測を可能とする理論はこれまで存在していなかった。
今回の研究では、弾性乱流がエネルギーの普遍的なべき乗減衰と断続的な振る舞いの双方を有することが判明した。
弾性乱流を測定するに当たり、3点で流速を測定。次に、2つの異なる地点で測定された流体速度を差し引いて差分を計算した。さらに、このような2つの差分をもう一度引くことで、2つ目の差分を算出している。スーパーコンピューターを用いたシミュレーションにより上記を計算したところ、弾性乱流の速度場が断続的であることが明らかになった。
心電図の測定では、信号に鋭いピークによって中断される小さな変動が生じる。古典的な流体では、高流速で生じる乱流において同様の変動が既に記述されていたものの、今回非常に低い流速で生じる弾性乱流でも同様のパターンを発見した。
今回の発見は、低速乱流の物理法則の理解につながるほか、弾性乱流を記述する数学的理論の開発に寄与する。理論を構築することで、流れの予測を立てて液体の混合を変化させる装置の設計などにつながることが期待される。