レアメタルの使用量を10分の1に抑えた、グリーン水素製造のための高性能水電解技術

Credit: Korea Institute of Science and Technology

韓国科学技術研究所(KIST)の研究チームが、グリーン水素製造のためのプロトン交換膜型水電解装置(PEMWE)に使用するレアメタル量を大幅に削減できる技術を開発した。

同研究成果は2023年3月9日、「Applied Catalysis B:Environmental」誌に掲載された。

脱炭素社会に向けたクリーンエネルギーとして期待されるグリーン水素は、再生可能エネルギーによる水の電気分解から得られる。中でも、PEMWEは、高電流密度で高純度の水素を生成するため、有力なグリーン水素製造技術だ。

PEMWEは、固体高分子型燃料電池と同様のプロトン交換膜が用いられ、燃料電池と逆反応の水の電気分解による水素と酸素の生成反応を起こす装置である。水素発生反応の陰極材料には炭素担持白金触媒(Pt/C)が、酸素発生反応の陽極材料にはイリジウム系触媒が使用される。

しかし、電極にイリジウムや白金などの高価なレアメタルを必要とするため、PEMWEの製造コストの高さが課題となっている。特に、イリジウムは、年間生産量が数トン程度であり、同じくレアメタルの白金生産量200トンと比べても、希少で高価なため、PEMWEの大規模な実用化を阻害する要因になっている。

そこで、KISTの研究チームは、触媒の内側を安価な導電性の窒化鉄に置き換え、反応に関与する表面を25nmのイリジウムで覆った、コアシェル構造の触媒を開発した。開発した陽極を用いた電解装置は、既存の商用電解装置と同等の性能を維持し、イリジウム触媒の量を従来のわずか10%に削減した。さらに、100時間以上稼働し、初期安定性が確認された。

KISTのHyun S. Park 博士は、「イリジウムの使用量を減らすことは、グリーン水素製造装置を広く普及させるために不可欠です。電極の性能と耐久性をさらに調査し、近いうちに商用装置に適用する予定です」と説明した。

関連情報

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る