- 2024-5-29
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名古屋大学は2024年5月23日、同大学と東京大学、岐阜大学、日本原子力研究開発機構(JAEA)、積水化学工業、中部電力の共同研究グループが、地震後の地下岩盤亀裂の急速シーリング技術を開発したと発表した。
放射性廃棄物の地下隔離、処分や温暖化対策に向けた二酸化炭素の地下貯留が、環境対策などの観点から検討されている。これらを実施する場合、今後数百年から数千年以上もの隔離が必要となる。また、石油を採取した掘削廃孔から生じるメタンガスの放出を抑制すべく、永久的シーリング(閉塞)も検討されている。
これらの物質を地下に半永久的に隔離するにあたっては、廃棄物を入れた立坑や二酸化炭素を注入したボーリング孔を確実にシーリングすることが必須となるが、現在のセメント素材を用いたシーリング材では数百年以上は持たないとされている。このため、さらなる長期的な耐久性を有するシーリング剤の開発が期待されている。
同研究グループは今回、保存状態が良好な化石を内包しており、自然環境中で実際に数万〜数十万年超にわたって風化などに耐えてきた球状コンクリーション(CaCO3)に着目し、その形成速度が速いことを発見した。
さらに、開発したコンクリーション化剤を用いて、地下350mの地下研究所にて実証試験を実施した。
結果として、コンクリーション化剤によって透水性が100分の1~1000分の1に低下することが判明。また、実験期間中にM5.4の直下型地震をはじめとした計11回の地震があり、亀裂シーリング効果の低下が生じたものの、速やかに再シーリングして回復することも確認した。
今回開発した技術は、液体タイプとマイクロカプセル(粒子)タイプの2種類に応用可能。液体タイプは岩盤亀裂にそのまま注入可能で、マイクロカプセルタイプは既存のセメントミルクと併せて岩盤内部の微小亀裂に注入できる。
同技術は、元素の拡散、沈殿によるシーリング法となっているため、μmサイズ以下の微細な岩盤空隙をシーリングできる。地下岩盤中での高圧の間隙水圧により生じる影響や、高圧注入による岩盤の物理的な破壊、損傷が生じない。さらに、コンクリーション化剤により炭酸カルシウム結晶(鉱物)が形成した後も、地下水中の自然由来重炭酸イオンやカルシウムイオンとの反応により結晶が持続的に成長。シーリング効果が長期的に保たれる。理論的には半永久的な維持が可能だという。
放射性廃棄物の地下隔離や処分、二酸化炭素の地下貯留、石油の廃孔シーリング、トンネル周辺岩盤の地下水抑制に加えて、地下水との反応を抑えることにより地上付近のさまざまなインフラの亀裂補修にも応用可能。幅広い技術への展開が期待される。
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