ホンダと大同特殊鋼は2016年7月12日、ハイブリッド車用駆動モーターに適用可能な高耐熱性と高磁力を持つ、重希土類完全不使用のネオジム磁石の実用化に成功したと発表した。同様の磁石の実用化は世界で初めてという。
ハイブリッド車などの駆動モーターは強力な磁力を持つネオジム磁石が使用されているが、高温環境下での耐熱性を確保するために、従来はジスプロシウムやテルビウムなどの重希土類元素が添加されてきた。
大同特殊鋼は子会社のダイドー電子で、一般的な焼結工法ではなく熱間加工法によってネオジム磁石を量産してきた。熱間加工法はナノレベルの結晶粒を高度に配向させる技術で、一般的な焼結磁石の10分の1程度の微細な結晶粒組織を得ることで、耐熱性の高い磁石を製造できる。
今回は、大同特殊鋼がその熱間加工法の技術をさらに高め、ホンダが駆動モーターの磁石形状を見直すなどの共同開発の結果、重希土類元素を全く使用しなくてもハイブリッド車用駆動モーターに適用可能な高耐熱性と高磁力を持ったネオジム磁石の実用化に成功した。
ホンダでは、この磁石に対応した新しいモーターを設計。トルクや出力、耐熱性において従来のモーターと同等の性能を達成しているという。
今回の技術開発により、ネオジム磁石の利用が今後拡大しても、重希土類元素の調達リスクを回避し調達ルートの多様化を図ることができるという。
ホンダでは、2016年秋に発売予定の新型フリードに搭載するハイブリッドシステム「SPORT HYBRID(スポーツハイブリッド) i-DCD」に、重希土類完全フリー熱間加工ネオジム磁石を採用する。順次、新型車に適用を拡大していく予定だ。
大同特殊鋼は、焼結ネオジム磁石の独占状態であったハイブリッド車駆動モーター用磁石市場に、熱間加工ネオジム磁石として新規参入する。製品は2016年8月から量産、出荷を開始する。