- 2024-6-27
- 化学・素材系, 技術ニュース, 海外ニュース
- Ankur Gupta, Proceedings of the National Academy of Science, イオン移動モデル, エネルギー貯蔵装置, コロラド大学ボルダー校, スーパーキャパシタ, ナノ細孔ネットワーク, 学術, 対イオン, 急速充電, 蓄電池, 長寿命, 電気二重層
コロラド大学ボルダー校は2024年5月23日、同大学の研究チームが、複雑なナノ細孔ネットワーク内におけるイオン移動モデルの構築に成功したと発表した。同モデルは、エネルギー貯蔵装置として重要なスーパーキャパシタの効率化に貢献する。
スーパーキャパシタは、電極表面に対イオンを吸着し、電気二重層を形成するため、他の蓄電池に比べて急速充電と長寿命を可能にする。電気二重層のイオン吸着量は表面積とともに増加するため、電極は電解質を含んだ細孔構造を持つ。
しかし、イオン輸送の物理的原理、ひいては最適な性能を持つ細孔ネットワーク形状の合理的設計は、未解決の問題だ。複雑な細孔ネットワークや現実的に長い時間スケールを持つ大規模系に対する従来の研究手法では、あまりにも計算コストや時間がかかりすぎるため、実質不可能であった。そのため、1960年代に提案された単一細孔をベースにしたモデルが、今も細孔構造の解析に使い続けられている。
研究チームは、複雑な細孔ネットワークにおける電解質輸送を予測するモデルを導入した。電気二重層の充電時間に対する接続と細孔径分布の影響を調べ、細孔構造と電気化学物性の関係を予測した。同モデルでは計算量が少なく、従来の手法より6桁速く結果を出した。5000個の細孔からなる三角格子は6分でシミュレーションできる。
同研究成果は、スーパーキャパシタの高効率設計など、さまざまなエネルギー貯蔵システムに展開できる可能性がある。同研究成果に対して、コロラド大学Ankur Gupta准教授は、「これは画期的なことです。われわれは、欠けていたピースを発見したのです」と述べた。
同研究成果は2024年5月24日、「Proceedings of the National Academy of Science」誌に掲載された。