埼玉医科大学は2024年2月15日、大阪大学、宇都宮大学と共同で、髪の毛ほどの細さの光ファイバー1本からなるレンズレス内視鏡を開発したと発表した。実用化されれば、脳や心臓のカテーテル治療の質を向上させるほか、病理メカニズムや薬理の解明にも寄与すると期待される。研究成果は2023年12月20日、米国光学会Applied Optics誌に掲載された。
埼玉医科大学は2018年、宇都宮大学が開発した超広帯域光源によるスペックルを除去した滑らかな光セクショニング技術を用いて、2mmの分解能をもつ三次元内視鏡を開発した。今回は、この三次元内視鏡に大阪大学が開発したゴーストイメージング技術を融合させ、レンズレスのシングルファイバーによるゴーストイメージングを世界で初めて実証した。
内視鏡技術には現在、光学的な血管内視鏡と光コヒーレンストモグラフィー、超音波診断の大きく分けて3つの方法がある。これまでも直径の細い内視鏡の開発が試みられてきたが、撮影するためのレンズが内視鏡の極細径化の課題だった。
また、光学式は赤血球によって光が散乱するため血管中の画像を取得することは難しく、血管内の診断には、光の散乱の影響を受けない超音波診断が広く普及している。だが、超音波診断は光学式の内視鏡に比べて分解能が低く、計測装置の細径化にも課題があった。
今回採用したゴーストイメージング法は、あらかじめ座標が登録された光(スペックルパターン)で対象物を照らし、散乱した光の信号強度の相関関係から対象物を画像化する。光が散乱する血液中でも、あまり影響を受けないため、血管内の検査にも活用できる。また、レンズなしで画像化できるため、直径0.1mmという髪の毛ほどの細さも可能になった。
実験では、波長840nmの単色の半導体レーザーを用い、光ファイバー先端から10mmの位置にある測定対象を全長2mの光ファイバー1本で画像化することに成功した。
研究グループでは今後、波長や偏光、波面を精密に制御し、極細径な血管内部の画像化を実現することで、病理診断できるほど高い空間分解能を有した極細径内視鏡の開発につなげたいとしている。さらにカテーテル治療に用いる超低侵襲な三次元ナビゲーションシステムの開発への発展も予定している。
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