- 2024-8-5
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米シカゴ大学プリツカー分子工学部のエネルギー貯蔵および変換研究室は、2024年7月3日、アノード(負極)を持たない構造のナトリウム固体電池を発表した。また、同日付けの『Nature Energy』誌に掲載された論文で、数百回の安定した充放電サイクルを達成する電池の構造を提示した。
この開発は、シカゴ大学プリツカー分子工学部とカリフォルニア大学サンディエゴ校の化学およびナノ工学部による共同研究による成果だ。
従来の電池は、充電中にイオンを蓄積するアノードを持つ。電池の使用中、イオンはアノードから電解液を通ってカソード(集電体)に流れ、その過程で電子機器や電気自動車に電力を供給する。
開発した電池の特徴は、アノードを除去した「アノードフリー」という構造と、リチウムの代わりにナトリウムを使用した点だ。
ナトリウムは地殻中の存在量がリチウムの約1000倍であり、資源の持続可能性という点で優れている。リチウムは、その希少性と需要の急増により市場での価格が高騰しているだけでなく、採掘活動が環境破壊にもつながる。
ナトリウムを使用することで、より安価で環境適合性の高い生産方法の確立だけでなく、新たな固体電解質を採用して安全性と出力の双方を改善した。
電池は、炭素や合金から成るアノードを取り除き、集電体上に直接アルカリ金属を電気化学的に析出させてイオンを貯蔵する。この構造は高いセル電圧、低いセルコスト、高いエネルギー密度を達成する一方で、電解質物質と集電体との接触をいかに強固にするかが課題であった。
液体の電解質は、表面を濡らすことで集電体との接触を確保できるが、固体電解質の場合は簡単ではない。一方で、液体電解質は、活物質を着実に消費しながら固体電解質界面相と呼ばれる蓄積物を作り出し、時間の経過とともに電池の有用性を低下させる欠点がある。
この問題に対して研究チームは、集電体を取り囲む電解質を使うのではなく、電解質を取り囲む集電体を形成するアプローチを考案した。具体的には、液体のように流れるアルミニウム粉末で集電体を形成した。
電池を組み立てる際、アルミニウム粉末は高圧下で高密度化され、液体電解質と同等な接触を保ちながら固体集電体を形成した。これにより、低コストで高効率のサイクルが可能になった。
研究チームは、開発したナトリウム固体電池について、電気自動車や電力網内で電力を貯蔵するグリッドストレージでの利用を想定しており、今回の技術は安価で急速充電が可能な大容量バッテリーの実現に近づくものだとしている。