産業用ロボットをスマートフォンのように当たり前に使える世界を――【Mujin Japanが目指す、どんなロボットでもつながる共通プラットフォームとは】

(株式会社Mujin Japan 取締役CEO 荒瀬 勇氏)

今回の連載は前後編の構成とし、独自の自動化統合プラットフォームを基盤に革新的なオートメーションを実現しているMujin Japan様に、物流業界における自動化の課題や最先端の自動化技術、今後の展望などをご紹介いただきます。

前編は、「ティーチング不要で精度100%を目指す知能ロボットとは」として、物流業界の課題やそれを解決する知能ロボットを中心とした自動化ソリューションを取り上げました。後編は「どんなロボットでもつながる共通プラットフォームとは」と題して、株式会社Mujin Japan 取締役CEO荒瀬 勇氏にお話を伺いました。(執筆:後藤銀河 撮影:編集部)

■前編の記事はこちら


物流の自動化は変種変量対応がカギ【Mujin Japanに聞く、ティーチング不要で精度100%を目指す知能ロボットとは】

<登壇者プロフィール>
株式会社Mujin Japan 取締役CEO 荒瀬 勇氏

大学にて機械工学を専攻。卒業後は台湾や米国でのエンジニアインターンシップを経て、日本国内大手機械メーカーのシステムエンジニアとして海外工場立ち上げや新機種開発などの大型プロジェクトに従事。2017年に株式会社Mujinに参画後は、営業部長、プロジェクトマネジメント部長、システムエンジニアリング本部長として数多くのプロジェクトを手掛け、中核メンバーとしてMujinの重要な柱の一つであるシステムエンジニアリング事業全体を統括。

<会社概要>
株式会社Mujin Japan
事業開始日:2024年4月1日
取締役CEO:荒瀬 勇(あらせ いさむ)
所在地:東京都江東区辰巳3-8-5
事業内容:自動化コンサルティング業務、産業用ロボット向け知能ロボットコントローラ・アプリケーション・ソフトウェアの販売およびインテグレーション業務

――前回は物流業界の課題、特に自動化の難しさと、それを解決する機械知能「Mujin MI」を搭載したロボットコントローラーを中心にご紹介いただきました。

[荒瀬氏]今回は、私たちがMujinコントローラプラットフォームで実現しようとしていること、という視点でお話させていただきます。私たちは産業用ロボットをスマートフォンのように誰でも必要なときに当たり前に使える世界、つまりロボットの導入障壁を解消し、普及を促すことで自動化を飛躍的に広め、世界中の生産性を底上げし、生活を、社会を、未来を豊かに変えていくことを目指しています。

ロボットの導入障壁にはさまざまな要因があります。例えば、ロボットメーカーごとにオペレーションシステムが異なっていたり、自動化にフレキシブルさが求められ、難易度が上がっていたりします。こうした課題を解決するために当社のMujinコントローラプラットフォームを導入していただければ、汎用的なプラットフォームとなり、お客様の利便性が向上し、スイッチングコストもミニマムになり、導入や運用が容易になります。

Mujinコントローラプラットフォームで、自動化ソリューションのスタンダードを目指す

――Mujinコントローラプラットフォームを産業ロボットの共通OS、スタンダードにすることで、相乗効果が生まれてくるということですね。

[荒瀬氏]パソコンでも産業用ロボットでも、スタンダードと呼ばれるようになるプラットフォームを作るためには、その上で提供するキラーアプリケーションが重要になります。産業用ロボットにおいても、まだ誰も実現してないようなもの、今までできなかったことができるようになるなど、ハードウェアがより高能力を発揮することで一気に活用が広がると思います。世の中には素晴らしい技術、製品があり、それぞれ得意分野は違うので、それをどうやって使うのかを考え、共存して自動化の市場を盛り上げたいですね。

当社ではロボットコントローラーのOEM提供(相手先ブランド名での製造)も行っています。お客様の中には自社の自動化機器を使って、より付加価値の高いシステムを作りたいというアイデアはあるが、それを実現するためのソフトウェアがなかなかありませんでした。そこで、私たちがその課題解決のお手伝いをさせていただけるよう、MujinコントローラをOEMとしてもご提供しています。

――荒瀬様のプロフィールを拝見しましたが、以前は国内大手機械メーカーのシステムエンジニアだったとのこと。大手製造業からスタートアップに転職されたのは、どのようなきっかけでしたか?

[荒瀬氏]私は前職で物流関係の自動化システムの立ち上げなどを手掛けていました。自動化設備のシステムエンジニアとして、レイアウトの設計、工場のラインや倉庫の仕様、工程能力や運用方法の検討などを担当していました。ある時、たまたまMujinのことを知り、興味がわいてHPを見てみると、「気軽にオフィスに来てください」と書かれていたので、すぐに会社訪問して、CEO 兼 共同創業者の滝野と会うことができ、2時間ぐらい話をしました。

その中で、創業者がきちんとしたビジョンを持っていて、それが一歩先、二歩先というレベルではなく、もっとずっと先を見据えたもので、こういう会社に出会える機会はもうないだろうと思ったのが、入社を決めた理由ですね。産業用ロボットを知能化するとか、自動化ソリューションを導入するということが最終的なゴールではなくて、世の中にあるモーター、アクチュエーターで動くものは基本的に全てロボットですから、それを標準のOSで動くように変えていければ、もっと良い世界になるだろう、といったゴールを見据えていたのです。また、物流業界に参入したのは、高難度な自動化技術が求められるため、中々自動化が進んでいなかったにも関わらず、身体に負荷のかかるような大変な作業も多く、私たちが持っている技術力でお客様の深刻な課題を解決したいという想いからです。

スタートアップはスピードと変化への対応が重要になる

――物流業界やスタートアップへのキャリアチェンジを考えているエンジニアに対して、何かアドバイスをいただけますでしょうか。

[荒瀬氏]私はスタートアップとして生き残っていくためには、スピードが命だと思っています。もちろん技術力がなければ土俵にも立てませんが、技術力があっても続かない会社はたくさんあります。ビッグプレーヤーが多い業界で生き残るためには、市場の変化やお客様のニーズをいち早く見極めて対応することも重要です。Mujinから独立してMujin Japanを設立したのも、日本国内のお客様のニーズをいち早く汲み取り、素早く課題を解決し、自動化ソリューションを一気通貫でご提案するためです。それによって、エンジニアが携わったプロジェクトが、実際のお客様の現場に実装されるのを最後まで見届けられます。また、Mujinはお客様現場主義のため、どんな優れた技術でも顧客に使われないと意味がないと考え、常に顧客のニーズに合わせた技術を開発しています。

自動化の領域で求められるのは、主体性を持って行動し、最後まで諦めないエンジニア

[荒瀬氏]Mujinには自己成長をし続けられ、新しいことに挑戦できる環境があり、自分が携わったプロジェクトが実装されるところまで携われるという魅力があります。およそ30カ国から集まった優秀なエンジニアがたくさんいるのですが、その人たちの話を聞いてみると、エンジニアとして会社を選択する際に最も重要視するのは、必ずしも収入ではないということが分かりました。Mujinには共同創業者兼CTOのDiankov Rosen(デアンコウ・ロセン)が開発した唯一無二の優秀な技術があり、当社のエンジニアたちは「ここならもっと面白いことができる」、「もっと成長できる」、「自分のプロジェクトが実際の現場に実装されるのを見られる」と感じて、Mujinで働くことを選んでくれているのです。

Mujinには、全ての従業員が心がけている7つのコアバリューがあります。私は7つの中で「NEVER GIVE UP、 NEVER SURRENDER(最後の1分まで断じて諦めない)」「TAKE INITIATIVE、BE INDEPENDENT(自分が最初に始める、主体性をもって行動で示す)」の2点を特に意識して行動し、従業員の皆さんにも7つのコアバリューの必要性を伝えてきました。変化の激しい自動化の領域では、こうした行動をとれること、そして、決めたことを最後までやり抜く力を持つエンジニアが求められるのだと思います。

Mujin社内の至る所に貼られている7つのコアバリュー

取材協力

株式会社Mujin Japan
株式会社Mujin(Youtube)



ライタープロフィール
後藤 銀河
アメショーの銀河(♂)をこよなく愛すライター兼編集者。エンジニアのバックグラウンドを生かし、国内外のニュース記事を中心に誰が読んでもわかりやすい文章を書けるよう、日々奮闘中。


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