折り曲げても半分に切断しても動き続けるリチウム硫黄電池――より安全で安定したサイクル寿命の新しい電池設計

Adapted from ACS Energy Letters 2024, DOI: 10.1021/acsenergylett.4c01907

中国の電子科技大学を中心とする研究チームは、既存の充電式電池の安定性と安全性を向上させるため、改良型硫化鉄カソードを採用したリチウム硫黄(Li-S)電池を設計した。あるプロトタイプは充放電サイクル300回以上でも高い安定性を維持し、別のプロトタイプは折り曲げて切断しても電力を供給できた。この研究成果は2024年9月13日付で『ACS Energy Letters』に掲載された。

おもちゃやハンディー掃除機、電動自転車など、多くのポータブルデバイスの電源となる充電式電池のほとんどは、リチウムイオン技術を使用している。しかし、リチウムイオン電池は寿命が短く、損傷すると発火する可能性もある。そんなリチウムイオン電池の材料として、硫黄を使うことが提案されてきた。硫黄は低コストで、従来のイオンベースの電池に使われているリチウム金属酸化物やその他の材料よりも、多くのエネルギーを保持できる可能性があるためだ。

高温でも安定したLi-S電池を作るため、炭酸塩ベースの電解質を使用して、硫化鉄カソードとリチウム金属を含むアノードを分離する試みがこれまでに提案されている。しかし、カソードの硫化物が電解質に溶け出すと、貫通できない沈殿物が形成され、電池の容量が著しく低下してしまうという問題があった。

研究チームは、カソードと電解質の間に層を設けることで、機能や再充電性を低下させることなく、この容量低下を招く腐食を抑えることを目指した。まず、硫化鉄カソードをさまざまなポリマーでコーティングした。初期の電気化学的性能試験では、ポリアクリル酸(PAA)が最も優れた性能を示し、300回の充放電サイクル後も電極の放電容量を維持した。

次に、PAAでコーティングした硫化鉄カソードを組み込んだプロトタイプ電池を設計した。この設計では、炭酸塩ベースの電解質、イオン源としてのリチウム金属箔、グラファイトアノードを採用している。そして、パウチ型(ラミネート型)電池とコイン型電池のプロトタイプを製作し、テストした。

パウチ型電池のテストでは、100回以上の充放電サイクルを経ても大幅な容量減衰が確認されることはなかった。さらなる実験では、折り曲げても、半分に切断しても機能することが分かった。コイン型電池のテストでは、300回の充放電サイクル後も72%の容量を維持した。

また、他の金属で作ったカソードにこのポリマーコーティングを施して、リチウムモリブデン電池とリチウムバナジウム電池を作製したところ、これらの電池も300回以上の充放電サイクルで安定した容量を示した。

研究チームによると、この成果は、コーティングされたカソードによって、より安全で長寿命のLi-S電池を製造できるだけでなく、他の金属硫化物を使った効率的な電池も製造可能であることを示しているという。

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