レーザー駆動核融合の研究施設を着工――米コロラド州立大学

米コロラド州立大学(CSU)は2024年10月17日、強力なレーザー研究施設「Advanced Technology Lasers for Applications and Science(ATLAS)」の建設工事を2024年10月に開始したと発表した。ATLASでの主要な研究テーマは、クリーンエネルギー源としてのレーザー駆動核融合の実用化で、2026年半ばに稼働開始予定だ。

核融合エネルギーは、原子核を融合させることで、太陽の内部でエネルギーを発生させている核融合反応を再現しようとする発電の一形態だ。レーザー駆動核融合が成功すれば、実質的に無限で持続可能なカーボンフリーエネルギーを安全に生成することが可能になる。

完成すれば、ATLASはCSUが開発した既存の超高出力レーザーのアップグレード版とともに、業界をリードする独Marvel Fusionが提供する新しいレーザー2台を備える予定だ。これらの高強度で高繰り返し率のレーザーを、単一の核融合ターゲットに向けて同時に発射するよう構成でき、アメリカ国内の発電能力の5000倍以上に当たる約7ペタワットものエネルギーを、約100京(1017)分の1秒の間、人間の髪の毛の幅ほどの焦点に照射する。

また、この3台の超高出力レーザーは、核融合エネルギーに限らず、基礎研究の重要なトピックを含む諸問題の研究に、個別で、あるいは他の組み合わせでも使用できる。

さらに、ATLASは医学などの学際的研究もサポートする予定で、腫瘍治療のために、非常に局所的な領域にエネルギーを付与する目的でレーザーを使用する可能性がある。その他に、マイクロチップのリソグラフィーや設計、フル稼働中の飛行機のエンジンタービンなど、高速で動く物体の詳細なX線イメージングなどもこの施設で研究する可能性がある。

この施設は約6600平方メートルの広さで、5700立方メートルを超えるコンクリートが使用される。ラボスペースは、清浄度クラスISO Class 6(クラス1000)までのクリーンルームを備え、レーザーシステムが適切に機能するよう、暖房、換気、空調(HVAC)システムが温度と湿度の極めて厳しい許容範囲を維持する。

ATLASは、米エネルギー省(DOE)科学局の核融合エネルギー科学プログラムと提携したCSUの40年にわたるレーザー開発研究と、2023年に開始したMarvel Fusionとの1億5000万ドル(約231億8600万円)の戦略的官民パートナーシップの成果を結集したものだ。

DOEは、2023年に「LaserNetUS」プログラムを通じてCSUに1250万ドルを授与し、加えて慣性核融合科学技術ハブにも資金1600万ドル(約24億7300万円)を提供した。これらの助成金は、高出力レーザーのアップグレードなど、既存の施設を使用する研究を支援している。また、DOEからの資金提供のおかげで、核融合やその他のテーマに取り組んでいる外部の研究者も研究施設を無料で利用できるようになり、多くの重要な分野にわたる活動を支えている。

関連情報

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