NIMS、ダイヤモンドがベースのトランジスタ「MOSFET」の開発に成功

国立研究開発法人の物質・材料研究機構(NIMS)の研究チームが、ダイヤモンドベースのトランジスタを製造する、新しいプロセスを開発した。現在のシリコンベースのトランジスタの限界を超え、高温や放射線条件下でも作動するエネルギー効率の高い次世代型トランジスタを製造が可能になるという。研究成果は、『Applied Physics Letters』誌に5月15日に発表されている。

現在のトランジスタは主にシリコンをベースとしているが、これまで進歩してきたシリコン技術にもいくつかの重要な技術的限界がある。シリコンベースの素子を電力輸送など大電力用の電子デバイスに利用すると、高いスイッチング損失をしばしば生じる。また自動車用エンジンなど高温になる環境での使用や、宇宙線など高レベル放射線に曝される環境での使用には、損傷しやすいという問題がある。

NIMSの研究チームは、電子ビーム蒸着技術を用いて、ダイヤモンドベースのエンハンスメント型電界効果トランジスタ(MOSFET)を製造する新プロセスを開発した。耐久性が非常に高い合成ダイヤモンドを利用することで、低消費電力かつ厳しい条件下でも作動するデバイスとなる。

研究チームをリードするNIMSの小出康夫理事は、「合成ダイヤモンドベースの半導体は、大変興味深い物理的性質を持っている」と語る。「合成ダイヤモンドは、物理的に硬質であることに加え、電気や熱の伝導性が高いため、大電力や高温環境への対応が可能だ。さらに、既存の半導体よりも大きな電圧にも耐え、絶縁破壊しにくい」と、ダイヤモンドをベースとする半導体素子の利点を説明する。

また、研究チームの劉江偉氏は、「この研究に関するイノベーションのひとつは、イットリウム酸化物(Y2O3)の絶縁層を、ダイヤモンド表面に直接蒸着させてゲート電極を形成したことだ」と説明する。Y2O3は熱安定性が高く、エネルギーバンドギャップが広いため、絶縁層として優れた機能を発揮できるという。

「我々の究極の目標は、ダイヤモンドで集積回路を作ることだ」と小出氏。「今後、ダイヤモンド・トランジスタの中での電子挙動についての理解を深め、厳しい熱的および放射線環境でも作動する、エネルギー効率の高いデバイスの開発をサポートしたい」と、その研究の目指すところを語っている。

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