米セントラルフロリダ大学、リチウムイオン電池と金属空気電池を高性能化する技術を開発

持続可能なエネルギーシステムの研究を推進するセントラルフロリダ大学の研究チーム

米セントラルフロリダ大学の研究チームは、2つの有望な電池性能向上技術を発表した。1つはリチウムイオン電池のサイクル寿命を向上する合金薄膜製陰極の開発で、もう1つは高効率な亜鉛空気電池の酸化還元反応を促進する新たな触媒の開発だ。各々の研究成果は、7月21日および9月14日の『Advanced Energy Materials』誌において報告されている。

リチウムイオンの改良を可能にする研究では、同チームは硫化ニッケルと硫化鉄の合金薄膜による陰極を開発した。硫化ニッケルと硫化鉄は単独でも高い伝導性を示すが、両者を組み合わせることで、より高い伝導性を示すことがわかった。さらにこの薄膜をエッチングすることでナノスケールの多孔質表面を生成し、化学反応に利用できる表面積を著しく拡大させ、伝導性をさらに高めることに成功した。

電池の宿命として、放電と再充電を繰り返すと劣化してしまうサイクル寿命がある。一般的なリチウムイオン電池のサイクル寿命は約300~500回だが、硫化ニッケル-硫化鉄電極を用いた電池での試験結果は、劣化するまで5000回以上も充放電を繰り返すことができた。

もう1つの研究は亜鉛空気電池に関するもの。燃料電池の一種である亜鉛空気電池は、正極に空気中の酸素、負極に亜鉛、電解液には水酸化カリウムなどを用い、現在の主な用途は補聴器向けの小型ボタン電池だ。正極となる酸素は外気から取り込むので電池サイズを小型化できるとともに、起電力やエネルギー密度が高いなどの特長がある。

亜鉛空気電池などの燃料電池では、電流を生み出す酸化還元に関わる化学反応を促進するために効率的な触媒が必要になる。白金やパラジウム、イリジウムなどの貴金属が高効率な触媒として知られているが、高コスト、安定性・耐久性に乏しいなど、大量生産が難しいという課題があった。

研究チームは、高伝導性の2次元材料グラフェンを基板とし、ナノメッシュ構造を備える電極触媒を開発した。この多孔質なナノメッシュ触媒は白金などよりも高い触媒効果を持ち、亜鉛空気電池に使用すると何度も充放電を繰り返すことができ、電極としての有効性が実証された。さらに雨中や高気温などの厳しい環境でも使用でき、貴金属を使わないため、安価に製造できるメリットがある。

研究チームを指導するYang Yang助教授は、「私たちはエネルギーに関わる様々な研究を続けてきたが、これら2つの研究成果は、安価かつ効率的にエネルギーを生産・貯蔵できるという、エネルギーと環境危機に対する有望なソリューションになる」と、その意義を説明している。

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