- 2018-8-17
- 技術ニュース, 電気・電子系
- AlGaNスペーサ層, GaN-HEMT, 単結晶ダイヤモンド基板接合技術, 富士通, 富士通研究所, 窒化ガリウムトランジスタ, 窒化ガリウム高電子移動度トランジスタ
富士通は2018年8月10日、従来比3倍となる窒化ガリウムトランジスタの高出力化に成功したと発表した。同技術を気象レーダーなどに適用することで、観測範囲を約2.3倍に拡大できるという。
窒化ガリウム(GaN)高電子移動度トランジスタ(HEMT)(以下、GaN HEMT)は高周波パワーアンプのトランジスタとして、レーダーや無線通信などの長距離電波用途に広く利用されている。
一方、レーダーなどの観測範囲を拡大するためには、パワーアンプに搭載するトランジスタの高出力化が必要とされる。しかし従来、高電圧ではトランジスタ内部の結晶破壊が起こりやすく、高出力に必要な大電流化と高電圧化を両立することが困難だった。
そこで同社は、結晶構造の電子供給層と走行層の間に、高抵抗なAlGaNスペーサ層を挿入。電子供給層とAlGaNスペーサ層に電圧を分散させることで、従来発生していた電子供給層における電子のエネルギー上昇を抑制した。その結果、動作電圧は100ボルトまで向上。これは、トランジスタの電極距離を1cmにした場合、30万ボルト以上の動作電圧になるという。
また、同社の単結晶ダイヤモンド基板接合技術と組み合わせたGaN HEMTを開発。出力を測定したところ、ゲート幅1mmあたり世界最高出力となる19.9W(従来比3倍)を達成した。
今後は、同技術を適用したGaN HEMTパワーアンプの熱抵抗や出力性能の評価を実施するとしている。そして、2020年度には、気象レーダーなどのレーダーシステムや5G無線通信システムなどへの適用に向けた、高出力な高周波GaN HEMTパワーアンプの実用化を目指すとしている。