アナログ回路設計に大事なのは、人の“感性”――トレックス・セミコンダクター 大久保誠寛氏

main

電源ICの設計・開発を行うトレックス・セミコンダクターに勤務して12年目という大久保誠寛氏。同社の事業本部第一ビジネスユニット第一製品開発グループの主任技師として製品開発をリードしている。

スマートフォン、デジタルカメラ、ゲーム機などが年々小型化、高性能化する中で超小型電源ICに特化した専業メーカーとして、トレックス・セミコンダクターの電源ICは各セットメーカーの間で採用が広がっている。

同社製品が高い評価を受けている理由は、優れた「アナログ技術」にある。アナログ回路の設計には地道な経験の積み重ねによるノウハウが非常に大切だという。ロジックだけでは最良の回路を作ることはできず、そこには“感性”が必要となってくる。

大久保氏は、中堅エンジニアとしてアナログ技術にこだわり、回路設計の中心人物となってLDO(低い入出力間電位差でも動作するリニア・レギュレータ)をメインに同社の企画・設計の場で活躍してきた。2016年4月にはアメリカ・シリコンバレーにある同社研究所へ赴任することも決まり、研究・開発のアウトプットをさらにワンランクアップしてくれるのではないかと会社からも期待されているエンジニアだ。

研究室に籠っての設計や企画の業務だけでなく、営業も兼ねて得意先を訪問するなど、幅広い知識の習得にも積極的に取り組む大久保氏。若いエンジニアには、疑問に対して貪欲に問い掛ける姿勢が必要だと指摘している。(執筆:長町 基、撮影:水戸 秀一)

「エンジニアになる」と意識せず大学へ。落とした必修の単位が「電子回路」だった

――幼いころ、何に興味を持っていましたか。どんなきっかけでエンジニアを志すようになったのでしょうか?

子供のころを考えると、正直今の仕事につながるようなことはしていませんでした。どちらかと言うとスポーツが好きでした。

高校は普通科で、高校3年生のときに理系のクラスに入りました。単純に数学が得意だったからです。そこで物理をはじめ理系科目を勉強しました。

大学はそのまま理工学部に進学しました。電気電子情報通信工学科です。モバイル機器や携帯電話が普及し始めていたころだったので、それらの分野がこれから一番伸びるだろうと思って選択しました。

そこで今の会社でも取り扱っている電子回路に出会いました。でも最初から印象が良かったわけではなく、必修科目の電子回路の授業で単位を落としてしまいました。必修なので、いつかは絶対取らないといけない。真面目に電子回路のことを勉強したら「面白いな」と感じ、専門を決めるとき、電子回路を扱う研究室に進みました。

アナログ回路の出来栄えは、設計者の感性によって変わってくる

torex_001

――電子回路が「面白いな」と思ったのはどういうところですか。

今の仕事でもあるアナログの電子回路に、大変興味を持ちました。デジタル回路はコンピューターに設計を任せることもできます。一方、アナログ回路というのは人の手が入りますし、人の感性によって出来栄えが変わってきます。例えば、回路設計するとき、素子の配置次第で属性が変わってきたり、素子のパラメーターの微調整で特性が変わったり、狙いどおりの設計をするには、経験と勘が必要になります。

そういった人の感性みたいなものが入り込む余地がある仕事は、自分を高めていく必要があって面白いですし、「自分の身に付けた技術が製品に役立っている」と実感できて大変やりがいを感じます。

1 2 3 4

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る