- 2019-7-30
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- Nature Nanotechnology, シリコンウェハ, マイクロピラー, モバイルバッテリー, ユタ大学, 太陽電池, 近接場熱輻射, 黒体限界
ユタ大学の研究チームは、近接場熱輻射を利用して、排熱を電気に変換するシリコン製デバイスを開発した。自動車エンジンの排熱を使って電気系に電力供給できるほか、モバイルバッテリーの長寿命化、太陽電池の高効率化も期待できる。研究結果は、2019年7月1日付けの『Nature Nanotechnology』に掲載されている。
物体が放射するエネルギーには理論的に限りがあり、「黒体限界」として知られている。しかし、2つの物体を微視的レベルに接近させると近接場熱輻射効果により、黒体限界を超える熱伝導が発生することが分かっている。しかし、ナノスケールの均一なギャップを維持することは非常に難しく、実用化には至っていない。
研究チームは、シリコンウェハから大きさ5×5mmのチップを2つ作り、チップ同士の間隔をマイクロピラーで約100nmに保持できるデバイスを作製した。そして真空中で片方を加熱し、もう片方を冷却することで熱流を発生させ、電気に変換することに成功した。
熱を電気としてシステムに還元すれば、自動車エンジンの排熱から電気系に給電できるほか、太陽電池の高効率化も期待できる。また、バッテリーの長寿命化、モバイル機器やCPUの冷却にもつなげたいと研究チームは考えている。
PCを使って部屋の温度が上がれば、温度を下げるためにエアコンをつける。それは多くのエネルギーを無駄にしている。環境にも優しい技術になるだろうと、研究チームは語っている。