捕食者を模した魚型ロボットでカダヤシ対策――侵入種との戦いの有益ツールに

世界各地で外来種として問題視されている「カダヤシ」に対して、その捕食者である「オオクチバス」を模した魚型ロボットを用いて心理的ストレスをかけ、繁殖を抑制できる可能性があることが分かった。ニューヨーク大学タンドン工科学校のMaurizio Porfiri教授らが、西オーストラリア大学と共同で行った研究で、その結果は2019年9月11日に『Journal of the Royal Society Interface』のオンライン版に掲載されている。

在来種の生物が逃げる選択肢の限られている湖や川で、外来種を管理することは重要な取り組みだ。世界中の淡水湖や川で見られるように、外来種であるカダヤシが急増すると、在来種の魚や両生類は減少してしまう。ところが、毒や罠を使う試みは、しばしば失敗したり、地域の野生生物に害を与えたりすることがある。

そこで研究チームは、カダヤシの主要な捕食者であるオオクチバスの生体模倣(biomimetic)ロボットを用いて、この問題に取り組んだ。まず、週に1回15分間、6週連続で、カダヤシの複数のグループをオオクチバスのロボットに晒した。ロボットの挙動は試行ごとに異なるが、いくつかの試行では、ロボットにカダヤシに対するリアルタイムのフィードバックを取り入れ、遊泳速度を急に速くするなど典型的な捕食行動を示すようにプログラムした。

そして、カダヤシとロボットとの相互作用をリアルタイムで追跡、分析し、ロボットの捕食行動の模倣の程度とカダヤシが示すストレス反応のレベルとの相関関係を明らかにした。カダヤシは、恐怖を感じるとフリーズしたり、危険の多い水域探索を躊躇したり、不規則な遊泳パターンを示したりという行動を見せる。

また、ストレス反応の生理学的パラメーターである体重と体長を定期的に測定した。体重の減少はエネルギーの蓄えの低下につながり、蓄えが少ない魚は、生存や繁殖の可能性が低くなる。これは個体数管理へ大きな影響を与える要素だ。実験結果からは、オオクチバスの攻撃的な遊泳パターンを良く模倣したロボットに晒されたカダヤシほど、強いストレス反応を示すことが分かった。しかも週にわずか15分間でも体重減少という顕著な影響が見られた。

以上のことから、オオクチバスの遊泳パターンと視覚的外観を厳密に再現した生体模倣ロボットは、短時間でもカダヤシにストレス反応、エネルギーの蓄えの損失を伴う回避行動と生理的変化を引き起こすこと、それがカダヤシの繁殖率の低下につながる可能性があることが示された。ただし、これらの影響が実際に野生の個体数変化につながるかどうかを明らかにするには、さらなる研究が必要とのことだ。

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