柔らかい基板上に形成したスピン素子が実用レベルの性能を発揮することを実証――新たな産業応用展開に期待 大阪大学など

柔らかいプラスチック基板(フレキシブル基板)上に形成したトンネル磁気抵抗素子の写真(左下・右上)と概略図(中央)

大阪大学は2019年11月11日、東京大学および村田製作所と共同で、柔らかいプラスチック基板(フレキシブル基板)上に形成したトンネル磁気抵抗素子が、硬い半導体シリコン基板上に形成した素子と同等以上の性能をもつことを実証したと発表した。

トンネル磁気抵抗素子は従来、硬いシリコン基板上に形成され、ハードディスクの読み取りヘッドや個体磁気メモリーとして利用されてきた。大阪大学、東京大学、村田製作所の共同研究グループは、従来から柔らかいフレキシブル基板上のスピン素子を用いた新たな産業応用展開を推進してきた。ナノメートル程度の厚みの磁性体薄膜や積層構造を用いた機能性電子デバイスであるスピン素子には、メモリー機能や磁界センシング機能がある。これに柔らかさが付与されれば、生体や構造物表面のモーションおよびひずみの検知などの、これまでできなかった重要な動作の検知が可能になる。

今回の研究では、ハードディスクの読み取りヘッドなどに広く用いられているCoFeB/Mgo/CoFeBの積層構造のトンネル磁気抵抗素子を使用。ポリイミド製の基板を用いることで、500℃までの高温処理に耐えられる素子の形成に成功した。また、同素子を引っ張った後に元に戻す動作を1000回繰り返しても、素子の抵抗や抵抗変化率がまったく変化しない高い耐久性を持つことも分かった。

研究グループによると今回の成果は、柔らかいスピン素子が実用レベルの性能を持つことを世界で初めて示した例だという。今回の研究成果によって、スピン素子のウェアラブルデバイスへの集積磁気メモリーの混載やフレキシブルな高感度磁気センサーとしての実用化、また基板の引き伸ばしによって抵抗変化をもたらす現象を利用したメカニカルセンサーやウェアラブル生体モーションセンサーの実用化などが期待できるという。

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