- 2022-3-22
- 用語集
- CAD利用技術者, CAD(Computer Aided Design), CAE(Computer Aided Engineering), CAM(Computer Aided Manufacturing), IoT, エンジニア, ソフトウェア, ドローン, メイテックネクスト, ロボットアーム, 四力学, 機械設計, 機械設計技術者, 電子回路設計
家電製品、自動車、情報機器、工作機械、産業機械をはじめ、私たちの身の回りにはさまざまな機械があふれています。そんな機械の“動くしくみ”を作るのが機械設計という仕事です。ソフトウェアや電子回路設計とは異なり、機械が直接的に動いたり、製品そのもののデザインやスペックを決定づけたりする技術だけに、「自分が設計したものが形として見られる」というよろこびを存分に味わえるのが大きな魅力。そんな機械設計エンジニアという仕事について説明します。
機械設計エンジニアの仕事とは?
機械設計とはどんな技術なのか、具体的な仕事内容に触れながら機械設計エンジニアという仕事について解説していきます。
機械設計とは
機械設計とは、読んで字のごとしで「機械が動く仕組み」を設計する仕事です。 私たちの身の回りにはさまざまな機械製品があふれていますが、それらの筐体(きょうたい)部分や機構部分の設計を行うのが機械設計エンジニアの仕事です。
機械製品のデザインや図面を作成し、組み立てや加工なども担当します。最新鋭の機械製品や工業用機械の規格を決定することもあるでしょう。
直接的に製品の機能やデザインに関わる技術領域だけに、製品開発の企画段階から参加し、コンセプトやメカニカル部分の仕様策定、設計、試作、試験/評価まで幅広く担当し、製品開発をリードしていく重要な仕事だと言えます。
機械設計の最新動向
他の職種でも言えることですが、近ごろは「人工知能(AI)が発達していくことで、機械設計の仕事が要らなくなるのではないか」という言説を見掛けることがあります。
しかし、AIに注目が集まることでAIを開発するエンジニアに対するニーズが高まってきたように、機械設計をAIに任せるようになるとしても、「機械設計をするAIを開発するエンジニア」や「機械設計をするAIを監督するエンジニア」などのニーズが生まれてくることでしょう。
機械自体のニーズにしても、今後も着実に大きくなっていくと見込まれています。アメリカの調査会社Report Oceanによると、世界の工作機械市場は2020年に約803億ドルだったのが、2021年から2027年にかけて年平均成長率で4%以上拡大していく見通しです。市場調査レポートを取り扱うグローバルインフォメーションは、世界の建設機械市場が、2021年の2083億ドルから年平均成長率3.8%で成長し、2026年には2504億ドルに到達すると伝えています。
機械設計エンジニアの仕事内容
メーカーなど製品開発の委託元と打ち合わせを行い、製品のコンセプトや求められる性能などを明確にする「概念設計」からスタートします。そこで具体的な仕様が決定したら、機械設計用のメカニカルCAD(Computer Aided Design)を用いて基本設計を行います。
次にCAE(Computer Aided Engineering)を用い、コンピューター上で設計したものが狙った通りの動きをするかシミュレーションを行い、設計の妥当性を検証します。その後、CAM(Computer Aided Manufacturing)などを用いて試作品を製作し、実験・検証を行う、というのが主なプロセスです。さらに生産技術部門と連携し、より効率的な生産が行えるよう、一部設計の見直しを行うなどの調整も図っていきます。
機械設計エンジニアが活躍する業界
機械設計は、多岐にわたる分野の機械が対象となるだけに、機械設計エンジニアが活躍するフィールドも無限に広がっています。一般的な白物家電はもちろん、情報家電、自動車、アミューズメント機器、工場などで使われる生産設備、産業用ロボットまで、幅広い分野のものづくりにおいてなくてはならない役割を果たしています。
また、成長著しいIoT分野においても、ドローンやロボットアームなど、精密機械領域において機械設計エンジニアの存在がより一層求められていくことは間違いありません。技術力やアイデアが優れていれば、優遇する企業も多く存在します。
設計の仕事の厳しさ
機械工学を学ぶには、「材料力学」「流体力学」「熱力学」「機械力学」という4つの力学が必要になると言われています。
こうした知識を身に付けるだけでも大変なのですが、いざ、実際の機械を設計しようとなると、CADの操作方法、ねじやモーターといった機械要素に関する理解、切削や研磨といった加工方法の利点・欠点や実現可能性、JISなどの規格に関する専門知識など、身に付けなくてはいけないことがたくさん出てきます。
さらに、設計した機械が安全に動作することも大切です。求められた要件を満たすように機械を設計するだけでなく、使用する人が安全に使用できるか、想像をめぐらす能力も求められてきます。
そうした困難さがある機械設計の仕事を、決して長くはない納期の中で、完了しなくてはなりません。営業、デザイナー、製造・加工する現場の技術者といった関係者ともコミュニケーションを取っていく必要もあります。機械設計の仕事は、実に多様な知識や能力が求められる仕事と言えるでしょう。
機械設計エンジニアに必要なスキル・資格
機械設計エンジニアへの転職を踏まえ、必要とされるスキルや、転職に有利になる可能性のある資格などについて説明します。
CADで設計するスキル
機械設計エンジニアに求められるスキルや資格にはどのようなものがあるのでしょうか。まずは、なんと言ってもCADスキルです。高精度な設計図面を作成し、コンピューター上で強度計算や応力解析を行うには、CADやCAEが欠かせません。
手描きで製図を行う方法もありますが、やはり高精度かつ効率的に製図作業を行うにはCADが必要不可欠。ということで、機械設計用のメカニカルCADの知識や、操作スキルは身につけておきたいものです。
資格としては、一般社団法人日本機械設計工業会が発行する「機械設計技術者」資格や、一般社団法人コンピュータ教育振興協会発行による「CAD利用技術者」資格があり、これらを取得しておけば機械設計エンジニアとしてのスタートを有利に切ることができるでしょう。
機械工学に関する知識
機械力学、熱力学、材料力学、流体力学など、いわゆる「四力学」を含む機械工学の知識があればなおよしです。さらに「ものが動く機構を考える」という仕事であるがゆえ、柔軟かつ論理的な思考が行えることも重要。また、大学や専門学校等で機械工学を学んだ方は、身に付けた基礎知識を実際の機械設計に生かす応用力なども大切になってくることでしょう。
新しいものを生み出す発想力
自社開発はもちろん、メーカーなど外部のお客さまからの受託開発による機械設計というケースも考えられるため、クライアントに深く寄り添い、その要望を余すところなくくみ取り、設計へと反映させられるヒアリング能力や、これまでにない価値を持つプロダクトを生み出す発想力なども、重要であることは言うまでもありません。
どうすればクライアントの要望を取り入れることができるか、検証や実験を重ねてアイデアを実現させる粘り強さも必要になるでしょう。
コミュニケーション能力
ある一つの製品を開発する場合、機械設計だけでなく、電子回路設計やソフトウェア設計、生産技術など他の領域のエンジニアたちとチームを組んで作業を行うことが基本となります。さらにクライアントと連携を行う場面も多々あることから、コミュニケーション能力は極めて大切なスキルだと言えます。
開発の過程でトラブルが発生した場合でも、コミュニケーション能力があれば、前後工程のエンジニアとの連携もスムーズに進み、課題を明確化して問題解決するスピードも速くなります。
機械設計に生かせる資格
機械設計に関連する資格としては、次のような資格があります。業務にも生かせる知識を身に付けられますので、積極的に取得に向けて勉強してみてはいかがでしょうか?
・機械設計技術者試験
日本機械設計工業会が、機械設計の技術を認定する資格です。1級、2級、3級があり、「安全で効率のよい機械を経済的に設計する機械設計技術者の総合能力を認定」(1級、2級)するため、あるいは「主に新人技術者、学生の技術水準を適正に評価」(3級)することで機械設計技術を向上させるために実施しています。1~3級の資格を持っていると、企業によっては資格手当の対象となることもあります。
・CAD利用技術者試験
前述のとおり、機械設計にはCADが必須です。CAD利用技術者試験は一般社団法人コンピュータ教育振興協会が認定する資格で、2次元CAD利用技術者試験、3次元CAD利用技術者試験があります。
CAD関連の資格としては、他にも「オートデスク認定資格プログラム」「Vectorworks操作技能認定試験」など、CADを開発するソフトウェアメーカーが認定するものもあります。
機械設計エンジニアのやりがい
仕事を通じてどんなよろこびやスキルを得られるのか。ここでは機械設計エンジニアという仕事の魅力について説明します。
最先端のものづくりに関われる
機械設計エンジニアは、新製品開発の構想段階から参加する機会も多々あることから、「自分の手で新しい製品を生み出すことができる」というやりがいを感じ、仲間と製品を作り上げたという達成感を分かち合うことができます。
自分が設計した商品がヒットしたときには、商品を通じて社会への影響を実感できますし、利用者やクライアントから感謝の言葉をもらうこともあるでしょう。産業機械の場合は、設備機器がものづくりや社会機能を支えているという、使命感にも通ずるよろこびを味わうことができます。
仕事はキャリアとして評価されやすい
当然のことながら、機械設計の場合は自分が手掛けた製品が成果物という「形」として残るため、実績を評価されやすいというメリットがあります。特に家電製品のような民生機器や自動車などはより人目に触れやすいため、転職においては非常に強力なアピール材料となり、設計した製品が優れていた場合は好待遇も期待できることでしょう。
また、機械設計は経験を積めば積むほど技術とノウハウが蓄積され、高難易度の設計に対応できることはもちろん、トラブルシュートなどにも強くなるため、「経験を豊富に積んでいる」という点も転職においては大きな武器となります。
市場のニーズに敏感になれる
テクノロジーは日進月歩で進化していくものです。それゆえ、常に情報収集を怠らず、市場の変化やテクノロジーの進歩をいち早くキャッチしていくことが重要です。そうした姿勢で仕事に取り組むことで、市場のニーズを敏感にキャッチし、それを踏まえた提案を行えるようになります。
単に技術に秀でたエンジニアではなく、「プラスα」の提案を通じた、価値あるものづくりを行えるエンジニアに成長を遂げるためにも、常に市場や技術の動向に関する情報収集を行いましょう。
機械設計の仕事に向いている人の特徴
機械設計エンジニアに向いている人はどんな人でしょうか。ここまでに挙げた能力・スキルも必要ですし、機械設計という仕事のやりがいに魅力を感じられることも大切でしょう。あらためて、この仕事に向いているのはどんな人か、いくつか特徴を挙げていきましょう。
機械が好き
機械設計の仕事は難しく、つらい思いをすることも多いです。根本的に「ロボットが好き」「歯車が動くのを見ているのが楽しい」といったように、機械に対する興味があり、機械が好きだと思えないと仕事に取り組むモチベーションを得られなくなっていくかもしれません。
新しい知識を身に付けるのが好き
仕事を進める中で、新しい素材、規格、ソフトウェアなどに対応できるように、さまざまな知識を身に付けていく必要があります。新しいことを学ぶことが好きだという人が向いているでしょう。
根気よく試行錯誤することが好き
機械設計に100点満点の正解はない、と言われています。自分なりに工夫しながら、上手くいかないところを改善しながら、わずかな寸法などの細部を調整しながら、より正解に近い設計を追い求めていく仕事です。
物事が順調に進まなくても粘り強く取り組めること、いろいろと試してみてより良い選択肢を見つけ出そうと歩み続けられることが大切でしょう。
機械設計のキャリアパス
機械設計エンジニアとしてのキャリアパスは、どのようなものになるのでしょうか。代表的なものを年代別に記してみましょう。
・20代
幅広い知識・経験が求められる機械設計の仕事では、20代は今後のキャリアにおいて必要不可欠な下積みの期間になるでしょう。自分の分かること、学ぶべきこと、長所・短所を認識しながら、上司や先輩の指導を仰ぎつつ、知識・経験を蓄えていきましょう。徐々に裁量が増え、1人前として認められるようになってきます。
・30代
1人のエンジニアとしての役割はできることが前提で、それ以上のプラスαが求められるようになってきます。
若手の指導をする、機械設計チームのマネジメントを手伝う、他部署のメンバーと円滑に仕事ができるように根回しをする、難度の高い重要な設計の業務を任される――といった具合に、機械設計以外の業務経験も積みながら、自分自身の適性を探り、やりたいことを考える時期になるでしょう。
・40代
機械設計エンジニアをまとめる課長のようなマネジメント層を志すか、機械設計エンジニアとして専門性を高めていくか、それとも顧客を相手に自社の取り扱う機械のことを説明するセールスエンジニアとして幅広く活躍するか、あなたのキャリアが決まってくる年代です。
30代の経験を踏まえ、40代以降はどんな仕事をするかしっかりと考えておくことがあなたのキャリアにとって大切になると思います。
機械設計の仕事に就く方法は?
機械設計エンジニアになるには、大学の工学部に進学するか、高等専門学校で機械工学科に進むか、といったように進学先を選ぶ時点で決めておくのが王道です。
未経験から機械設計エンジニアとして採用されることは非常に難しいです。それでも機械系以外の学校を卒業して機械設計エンジニアを目指すとしたら、eラーニングなどで最低限の知識を学習しておく必要があるでしょう。各地にある職業能力開発促進センターで機械設計に必要な技能を学び、求人を出している企業へ応募するといったやり方も考えられます。あるいは、機械の設計だけでなく加工・組立も自社で対応している中小企業に加工・組立を担当する社員として入っておいて、業務時間外で機械設計のことを学び、技術が身についてきたところで機械設計の部署への異動を希望するという選択肢もあり得ます。いずれにせよ、狭き門にはなりますが、可能性はゼロではありません。
機械設計エンジニアは将来性も明るい分野
機械がある限り必要とされ続ける機械設計エンジニア。また、機械はあらゆる産業分野で欠かせないものであり、同時に「人の手」、「経験値」が大きくものを言う仕事でもあるため、「近い将来、AIに仕事を奪われる」ということも考えにくいです。
そういった意味では、機械設計エンジニアの将来性は明るく、新たなキャリアチェンジを図るにあたって安心して飛び込んでいきやすい世界だと言えます。
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