生産設備、自動車部品、民生品などの経験を経て、産業用ロボットの設計開発で約14年。機械系エンジニアが歩んだキャリア___メイテック 池田 善朗氏

株式会社メイテックは、全産業界の企業を対象にプロフェッショナルなエンジニアによる設計・開発業務のソリューションサービスを提供している企業だ。今回登場いただく池田 善朗氏は、民生品の製品設計に挑戦するためにメイテックに中途入社し、液晶テレビ、チューナーボックスの設計業務を経て、今では約14年の産業用ロボットの設計開発経験を持つベテランエンジニアだ。自身の業務だけでなく、若手の育成にも携わりながらお客様の期待に応え続ける池田氏に、これまでのキャリアやエンジニアという職業としての働き方、メイテックという会社の特徴を語っていただいた。(執筆・撮影:編集部)

父の仕事を手伝うために、文系から理系への進路変更を決意。

──池田さんがエンジニアを目指したきっかけを教えてください。

[池田氏]私の父は自動車の生産設備や治工具をつくる設計会社に勤めていて、その後独立したのですが、帰宅時間は遅く、常に忙しそうでした。そんな姿を見て「将来は父を手伝わなくては」と思ったのがエンジニアを目指したきっかけですね。

実は、私はずっと文系の勉強をしていたのですが、このような考えもあって、高校卒業間際に理系に進むことを決めたのです。

──専門学校ではどんなことを学びましたか?

[池田氏]主に機械工学の基礎知識です。機械力学や熱力学といった4力学や手描き図面のトレースなどを学びました。中でも設計業務に近いトレース作業は好きでしたね。

そして、2年目に入るとすぐに就職活動が始まりました。当時はバブルが弾けた頃で、父の仕事を継ぐつもりだったのですが、景気が悪化していたこともあり、一旦地元の企業に就職することにしたのです。

地元で就職し、派遣と講師の業務を通じてCAD操作と設計の経験を積む。

──就職した企業ではどんな業務を担当しましたか?

[池田氏]初めて入社した会社では、主に自動車の生産ライン設計を担当しました。エアー回路設計知識、図面を描く能力、材料力学などの知識が必要で、車のボディーが一通り組みあがるまでの工程設計を経験しました。2年半程勤めたのですが、会社業績悪化により、別の会社に就職することになりました。

──次の就職先でも生産設備を担当されたのですか?

[池田氏]この会社は色々な事業を手掛けていて、当時珍しかった3DCADのPro/ENGINEERの販売代理店事業、テレビ向けの3DCG作成、CADの導入支援や教育、そして技術支援を行う派遣事業を行っていました。ここで初めてCADと出会い、お客様先で仕事をする派遣業務を経験することになります。Pro/ENGINEERを使い始め、自己流で操作法や知識を習得したのですが、当時は3DCADを使える人が限られていたので、その希少性から多くの講師依頼がきました。

──CADや派遣業務と初めて出会った会社ということですね。この後、再度転職をされてますね。

[池田氏]実はこの会社も業績が悪化し、転職が必要になってしまいました。会社の上司が立ち上げた会社に誘われたのですが、同時に、今の所属会社であるメイテックのエンジニアからも入社しないか?と誘われていました。当時は子供も小さく単身赴任で働くことは考え難く、地元で働くことを優先していたのでメイテックは断り、上司の会社に入社することに。

この会社は派遣事業とCADの教育事業を手掛けていて、自動車部品、インバーター、金型の3Dモデリング、ダイカスト設計など、色々な製品の設計業務に携わり、お客様との折衝業務、設計、プロジェクトマネジメントなども経験し、業務の幅とスキルを高めることができました。CADの講師もやっていたので、大勢の前でプレゼンする機会も増えました。元々人見知りするタイプでしたが、講師経験を重ねるうちに自然と緊張もしなくなり、プレゼンテーションのスキルも培われたと思います。

──業務範囲、製品の幅も広がり、CADに触る機会も増え、エンジニアとしての力も付いた時期だったのですね。

[池田氏]確かに、機械エンジニアとしての知識や技術はついたのですが、それは「浅く広い」ものであり、メーカーのエンジニアのように一つの製品を極めているわけではありません。このまま経験を重ねて自分に何が残るのか、これが正しい道なのかと悩んだ時期でもあるのです。

──エンジニアとしてのキャリアに悩んだ時期でもあると。何か特定の製品や業務をやりたい、という希望はあったのでしょうか?

[池田氏]明確に言えるのは、民生品の製品設計がやりたかったということです。自分のつくったものを手に取ることができて、ユーザーの反応がしっかり見える。これが自分にとって大事な要素でした。今後のキャリアに悩みながらも民生品の製品設計への思いが強くなり、7年勤めた会社からの転職を決意しました。

民生品の製品設計に挑戦するためにメイテックへ。

──そして、現在所属しているメイテックに転職されたわけですね。

[池田氏]はい。民生品の製品設計ができる会社に行こうと思い、まずは転職サイトに登録しました。そして、以前声をかけてくれたメイテックのエンジニアに、もう一度話を聞くことにしました。この方は仕事で一緒になったことがあるのですが、エンジニアとしての知識や技術が深く、お客様への対応もしっかりしていて、こんなできる人がいる会社なんだなと強く印象に残っていました。元々派遣業務の経験はあったので抵抗感はなかったですし、メイテックは取引先に大手企業が多く、もし希望と違った配属先になっても配属先の変更も交渉できると聞き、不安だった点も解消されました。そして正式にメイテックに応募し、無事に採用してもらうことができました。

──民生品の設計を希望してメイテックに入社し、どのような仕事を担当されたのでしょうか?

[池田氏]入社後は厚木で研修を受け、すぐに液晶テレビとチューナーボックスの筐体設計を担当することになりました。筐体と言っても機械エンジニアの役割は広く、詳細設計、試作、量産化まで一通りの業務を経験することができました。

メイテックで働くようになって感じたのは、会社の仲間と一緒に仕事をすることの頼もしさ、でしょうか。以前の会社では任される業務範囲が広く、責任も大きかったのですが、周囲に相談できる人はいませんでした。しかし、メイテックでは周囲に必ず同じ会社の頼れる仲間がいて、技術や会社のことについて気軽に色々教えてもらうことができたのです。中途入社で不安な面もありましたが、仲間のおかげで安心して業務に取り組むことができました。

──ここで得られた経験や知識という点では、どのようなものが挙げられますか?

[池田氏]この配属先で得られた経験は、その後の全ての業務で活かすことができています。その経験とは「責任」であり、具体的には試作レベルの製品の品質面に関する決裁権を与えてもらっていたのです。派遣という立場では中々経験できないものだと思いますが、自分の判断の責任を意識するようになり、エンジニアとして一段成長することができたと思います。

また、技術知識で言えば、金型、樹脂成型に強くなったと思います。量産用の金型を扱っていたので、製品に不良を出さないような樹脂の設計は本当に勉強させていただきました。金型メーカーにも出張させてもらっていたので、プロの知識や技術に触れる機会があり、それは今でも私の頭の中に全て入っています。

──この配属先ではどれくらい業務をされたのですか?

[池田氏]約2年程ですね。その間、2つの製品とバリエーションとして5機種の設計開発に携わりました。とてもいい経験をさせてもらったお客様だったのですが、リーマンショックの影響で契約が終了することに。その後は、所属拠点に戻って1年間の研修期間を過ごしました。

──リーマンショックで会社も厳しい状況だったと思いますが、不安はなかったのですか?

[池田氏]メイテックも多くのエンジニアが契約終了となり、会社の業績も悪化していました。それでも会社がリストラをせず、社内で新たに研修体制をつくって、配属に向けた取り組みと営業活動を進めてくれたことには本当に感謝しています。

リーマンショックを乗り越え、長く携わることになる産業用ロボットの設計業務へ。

──約1年の研修の後、次の配属先が決定したわけですね。

[池田氏]はい、次は産業用ロボットを開発・製造しているお客様で、垂直・水平ロボットの設計を担当することになりました。元々就業していたメイテックのエンジニアと交代で、当初は2カ月間という予定だったのですが、気に入っていただけたのか、14年目になる今もこのお客様先でお世話になっています(笑)。

ここでは、ロボットの回転ユニットの配線が捻じれないような機構を樹脂で実現したい、というお客様のニーズに、私の樹脂設計の経験がはまったのだと思います。以前、搬送機の設計を経験したことはありますが、ロボット自体は初めての製品です。配線などの電気系統も機械エンジニアが担当することになっていたので、樹脂の知識だけでなく、電気のパターンの幅、電流値、FPCといった電気系の知識も勉強しながら業務に対応しました。なんとかお客様の要望を実現し、その後もこのお客様先で業務が続くことになったのです。

──ご経歴を見ると、2010年から業務が始まっているので、約14年ロボットに携わっていることになりますね。この間、どのような機種を開発されたのでしょうか?

[池田氏]機種としては、4機種ですね。ロボットの詳細設計、樹脂・鋳物筐体、構造、機構の設計、金型の手配や評価用治工具の設計、試作、量産対応まで、幅広く業務を任せてもらうことができました。ここ3年程は、量産された後の不具合への対応や、お客様の要望に応じたカスタマイズ対応がメインになっています。

──池田さんは、ロボットの設計開発業務のやりがいについてどのようにお考えですか?

[池田氏]ロボットの設計開発は面白い仕事です。様々な先端技術が使われるので、色々な知識が必要で、それに触れる機会もあります。ただ、ロボットはとにかく解析ができないと仕事にならないのです。ロボットにどういう運動をさせて、その時にどこにどれだけ荷重がかかるか。部品への荷重と応力なども理解する必要があります。解析は以前やったことがありますが、本格的に学んで習得したのはこの配属先からですね。

──では、ロボットエンジニアを目指す人に向けて、何かアドバイスをいただけますか?

[池田氏]ロボットに限らずかもしれないですが、まず必要になるのが製図とものづくりの知識でしょう。ものづくりの知識とは、例えば、ある部品をつくるのにどんな方法があるのか、その方法をどうやって選別するのか、試作と量産のときのつくり方の違い、などですね。どんな工程を経てものがつくられているのか、そうした基礎知識は最低限必要になります。その次に必要になるのが、仕様への理解でしょうか。クリーン仕様や防滴仕様など、用途に応じて異なる仕様への理解があれば、仕事もスムーズに進められるはずです。

──ありがとうございます。池田さんご自身は今後もロボットの業務を続けることになるのでしょうか?

[池田氏]まだ今のお客様での業務は続く予定なので、お客様の期待に応えてしっかりアウトプットを出していこうと考えています。また、メイテック社内の取り組みとして、若手エンジニアの育成にも携わるようになりました。今は量産対応を任せてもらっているので、その業務に対して、メイテックでチームとして貢献できるよう、私が若手の育成と納期管理も含めた業務のマネジメントを行っています。こうした取り組みに挑戦させてくれるのも、お客様がそれを許してくれるのも、メイテックならではかもしれません。

その後の話になると思いますが、いずれまた民生品の設計業務に戻りたいですね。自分が作った製品を身近に感じられるというのが一番のやりがいなので、大変さはありますが、またあの充実感を味わいたいです。

池田氏の考える、派遣という働き方、メイテックという会社の魅力とは?

──ありがとうございます。池田さんは派遣での業務経験が長いですが、派遣という働き方をどのように捉えていますか?

[池田氏]そうですね、派遣は様々な製品、業務に携わる機会があるので、色々な経験を積みたい人、好奇心が強い人に向いている働き方だと思います。私も民生品の設計という希望はあるものの、特定の製品、業務にこだわっているわけではないので、自分には合っている働き方だと捉えています。

──メイテックという会社の魅力についてはいかがでしょうか?

[池田氏]メイテックという会社の魅力は、ブランド力、お客様との信頼関係があることだと思います。今の配属先のお客様も、先輩達が積み上げ、私たちが引き継いでいる信頼関係から「メイテックに頼めばなんとかしてくれる」と思っていただけているようなので、これからもしっかりとアウトプットを出し、信頼に応えていきたいです。

また、こうしたアウトプットや顧客満足度の考え方について、会社が主導してしっかり教育を行ってくれる点も良いところですね。リーマンショックの時に自社で研修をしていた時に、これらを改めて勉強する機会をつくってくれたおかげで、今の業務にもしっかり生かすことができています。

──最後に、メイテックでエンジニアとしてどう成長できるのかについて、お考えを聞かせてください。

[池田氏]メイテックでは、様々な製品、業務に携わることができて、お客様からの信頼を得ることでレベルの高い仕事を任せてもらうことができます。私は過去に2社で派遣業務を経験していますが、その時と比較しても、体験できる業務や得られる経験値が全く異なります。これは個人の努力も勿論必要ですが、メイテックという会社のブランド力も影響しているでしょう。私も定年まで、現場の第一線でものづくりに携わり続けることができるよう、これからも技術力を高めて、お客様の期待に応え続けていきます。

関連情報

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