- 2020-2-17
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- Orlando Rojas, アルギン酸, アールト大学, カニ, キチン, サステナブル, サンパウロ大学, ブリティッシュコロンビア大学, マイクロファイバー乾式伸線, 機能性材料
フィンランドのアールト大学は、2020年1月28日、ブラジルのサンパウロ大学、カナダのブリティッシュコロンビア大学と共同で、カニの甲羅と海藻の成分からサステナブルな機能性材料を作る方法を発見したと発表した。
研究者たちは、抗菌性があることで知られているキチンの特性と強力なゲルを形成する海藻のアルギン酸とを組み合わせた繊維を作ることを目指して研究を行った。その結果、ワタリガニの殻から抽出したキチンナノファイバーの懸濁液と、海藻由来のアルギン酸ナトリウム溶液とを接触させ、その接合部分の頂点を上に引っ張って紡ぎ出し、頑丈で抗菌性のある繊維を作製することに成功した。
アールト大学のOrlando Rojas教授は「考案された材料は、正反対の電荷を持つ成分の間に起きる強い相互作用を利用して作製された。我々は、アルギン酸溶液がキチンナノファイバーの懸濁液と接触すると、アルギン酸がキチンナノ粒子の周りに巻き付き、上方へ引き出されるにつれて並列に整列する繊維を形成することを発見した」と説明する。
研究チームは、この材料が外科手術用の糸や体内組織工学などに使う材料となる可能性が高いと考えている。他の用途としては、創傷治癒、皮膚の保護、やけど治療といった目的で皮膚に貼るパッドやメッシュなども考えられる。
また、今後の開発については、糸を途切れずに形成できることを実証したうえで、大規模化の可能性を検討しているという。Rojas教授は「同時に個別の懸濁液からマイクロファイバー乾式伸線を行えば、最終的に規模を拡大できる可能性がある」と述べている。
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