- 2020-3-3
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- Biofabrication, コラーゲン, トロント大学, ハンドヘルド3Dプリンタ, バイオインク, フィブリン, プリント, 皮膚シート, 自家培養表皮, 間葉系間質細胞
カナダのトロント大学の研究チームは、重度の火傷の治療に利用できる新しい医療器具として、皮膚用のハンドヘルド3Dプリンタを開発した。火傷の大きさや形状に関わらず、でこぼこしている場所にも人工皮膚を傷口に直接「プリント」することができる。研究結果は、2020年2月4日付けの『Biofabrication』に掲載されている。
重度の火傷の治療では、自身の健康な皮膚を移植する方法が一般的だ。しかし、火傷の深さや範囲によっては、移植が難しい場合がある。また、動物由来のコラーゲンや自家培養表皮を利用する方法もあるが、理想的とはいえないと、研究チームは説明する。
今回研究チームは、皮膚の再生を促進する間葉系間質細胞と、血液凝固に関わるタンパク質のフィブリンをベースとしたバイオインクを開発した。ディスペンサーの先端には、安全のため使い捨てのマイクロ流体プリントヘッドを取り付け、ソフトホイールで制御することで、傷口が平らでなくてもプリントできるようにした。
表皮の下の真皮にまで達した火傷に対する効果を確認するため、ブタの皮膚を使って実験し、「皮膚シート」を均一、安全かつ確実に貼り付けることに成功したと、研究チームは語る。
従来の治療法と比べて治りも良く、傷口の炎症、傷跡、収縮が減少したという。研究チームは、今後5年以内に医療現場でハンドヘルドの皮膚用プリンタが使われるようになると見込んでいる。