金沢工業大学は2020年3月2日、三栄興業と共同で、高い比強度と比弾性率を持ち、導電性にも優れた熱可塑性炭素繊維複合材料を開発したと発表した。
同大学によると、炭素繊維と樹脂を混ぜることで軽くて強い材料となるため、近年特に航空機や自動車分野などでの活用が進んでいる。しかし炭素繊維と樹脂はうまく混ざらないことが多いため、「相溶化剤」を用いて混ざりやすくするなどの処置が取られてきた。
従来、無水マレイン化ポリプロピレン(MAPP)が相溶化剤として用いられてきたが、同溶化剤を用いた場合、炭素繊維と樹脂が点で接着されるために界面接着性が不十分(薄弱な接着力)で、導電性も十分には得られないという課題があった。さらに、界面接着性を向上させるためにMAPPを大量に添加すると複合材の導電性が低下するという問題もあった。
今回同大学らは、炭素繊維と樹脂を点ではなく面で結合することができる相溶化剤「アイソタクチックポリプロピレンポリアクリル酸共重合体(iPP-PAA)」を開発した。面で結合するために少量でも優れた界面接着性(強固な接着力)を発揮。高比強度および高比弾性率を持ち、導電性にも優れた複合材料を生み出すことができる。さらに炭素繊維長が0.1~50mmの短繊維でも剛性を保つことができるため、熱可塑性炭素繊維複合材料として、射出成形や押出成形などの成形性も向上させることができる。
今回開発した熱可塑性炭素繊維複合材料は、高い機械特性が要求される自動車や航空機の部材や建材などでの用途や、高い帯電防止性能が求められる半導体などの精密部品の成形分野での需要が見込まれるという。なお、三栄興業では、iPP-PAAのサンプルを有償で提供している。