ケミカル加工による自在湾曲可能な液晶パネルを開発 NSC

NSCが4月24日、ガラス基板製の液晶パネルの加工に、開発した高度化ケミカル加工技術(ケミカル研磨、ケミカル分断)を導入し、安価で自在に湾曲させることができる可変曲面の液晶パネル(最小曲率半径R100mm)を開発したと発表した。

車載用ディスプレイは、厳しい環境下でも動作する液晶パネルが採用されており、将来の自動車開発においては、より用途の厳しい環境でも耐える曲面ディスプレイの研究が盛んだ。しかし、現在開発されている曲面の液晶パネルは、曲率半径R800~1000mm程度と湾曲度合いとしては小さく、固定曲面のものなので、将来のニーズには対応できないという。

液晶パネルはガラス基板(板厚0.5mm)を2枚貼り合わせた構成で、総厚1.0mmのため、そのままで湾曲することは難しい。湾曲させるには、微細な傷がない状態で、総厚を薄くする必要があるが、砥粒加工などではガラス基板表面に微細な傷が発生することが避けられず、湾曲時に破壊するリスクが高いのが現状だ。

また、大判ガラス基板からパネルを分断する工程でも、スクライブ・ブレイク加工などでは、分断面に微細な傷が発生し、湾曲時の破壊リスクが高いという。

そこでNSCは、通常の0.5mmの厚板ガラスで液晶パネルを総厚1.0mmに完成させた後、ケミカル研磨方式を用いて総厚を0.15mmまで薄くし、ケミカル分断方式によって大判ガラス基板からパネルを分断することで自在に湾曲させることを可能にした。

NSCが開発した方式は、液晶パネルを作製する際、通常の厚板ガラスのハンドリングにケミカル加工工程を追加するだけでよく、設備投資を多くかけずして、可変曲面の液晶パネルを量産できる。また、物理加工技術と比較して、原理的に微細な傷が発生しにくく、本来のガラスの強度を保てる。

今後は、大判ガラス基板に対応した高度化ケミカル加工の量産技術の確立に向け、研究開発を進めていくという。量産時期は2022年度を目標としている。本技術が実用化されれば、車載用ディスプレイなど厳しい環境での用途向けに、自在湾曲可能な液晶パネルを安価に提供できることが期待できる。

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