理工系分野には学力に関わらず男子学生を引き付ける何かがある――ニューヨーク大、男女格差に関する調査結果を発表

Photo courtesy of Getty Images/SDI Productions.

文部科学省が発表した令和元年度「学校基本調査-結果の概要」によると、大学(大学院含む)における女子学生の割合は、学部、修士課程、博士課程いずれも過去最高を示した。学部在学者に占める女子学生の割合は、理学が27.9%、工学が15.4%だ。ただし、理学といっても、物理学もあれば生物学もあり、細かく見れば差はあるだろう。アメリカのある調査によれば、STEM(科学、技術、工学、数学)科目の中には男女比が1:1のものもあるが、物理学(Physics)、工学(Engineering)、コンピューターサイエンス(Computer Science)といったPECS科目に関してはその男女比は4:1だったという。

ニューヨーク大学の研究チームは、男子のほうが女子より数学や科学の成績が良いから、大学でPECSを専攻する男女の人数格差が起きているわけではないと発表した。むしろ、高校時代に数学や科学の成績が悪くても、PECSを選ぶ男子学生がいる傾向があるという。研究結果は、2020年6月19日付の『Science』に掲載されている。

研究チームは、アメリカ国内の約6000人を対象に、4年制高校入学時から大学3年までの7年間の成績や希望する進路、実際の進路などを調査した。

その結果、大学でPECSを専攻する男子学生の中には、高校時代は数学や科学の成績が悪かった学生も多くいることが分かった。最初はPECS分野を専攻したいとは考えていなかったが、後に実際に大学で専攻している学生の割合も、高校時代の数学や科学の成績に関わらず、女子学生の割合は男子学生に比べて明らかに少ない傾向にあった。

「物理学、工学、コンピュータサイエンス分野は、成績の悪い男性も特異的に引き付けてやまない。その結果、女性のSTEM能力が高く成績が良くても、PECS分野を専攻している女性が少ないという状態になっている」と、研究を率いたJoseph R. Cimpian准教授は語る。

研究チームは、このジェンダーギャップの原因を探った。成績が良い学生については、これまでの研究通り、学生の希望進路や科学への自信度で説明できたが、これでは成績に関わらずPECS分野に男子学生が多い理由を説明できなかった。

STEMへの自信をつけさせたり、早くから将来の進路について考えさせたりといった取り組みは、成績が良い女子には有効かもしれないが、成績が平均以下の女子には効果がないようだとも分析している。

こうした要因を超えた何かが、成績が低くても男子を引き付け、成績が平均以下の女子を排除している可能性があり、それに対処しなければ、PECS分野でのジェンダーギャップが完全に解消することはないと論文では主張している。同時に、そういった取り組みは、学生全体の質を向上させることになるとも示唆している。

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