- 2020-9-29
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- TANAKAホールディングス, TRuST(トラスト), プリカーサー, 化学気相成長法(CVD), 原子層堆積(ALD), 液体ルテニウムプリカーサー, 田中貴金属工業
TANAKAホールディングスは2020年9月28日、同社グループ会社の田中貴金属工業と韓国の嶺南大学校工科大学が協同で、世界最高水準の蒸気圧を持つCVD/ALD用液体ルテニウムプリカーサー「TRuST(トラスト)」を開発したと発表した。
プリカーサーは、CVD(化学気相成長法)やALD(原子層堆積法)などの方法で、基板上へ金属薄膜や金属配線を形成する際に用いられる化合物だ。CVDおよびALDプロセスは、段差被覆性に優れ多くの種類の下地基板上に成膜できるのが特徴だ。TANAKAホールディングスによると、半導体の微細化に伴う構造の複雑化や細線化に対して有効な成膜手法だという。
プリカーサーは、分子構造が小さく蒸気圧が高いほど、成膜室内のプリカーサーの濃度を高めたり、基板表面へのプリカーサー分子の吸着密度を高くしたりできるために、優れた段差被覆性の実現と成膜速度の向上が可能となる。
今回の研究では、コンピューターシミュレーションなどの方法を用いて分子構造の小型化、最適化を実施。プリカーサーとして重要な特性である液体で蒸気圧が高く、成膜に適した熱的安定性を持つ貴金属化合物の開発に成功した。
ALDによる成膜速度は1サイクルあたり約1.7Åで、液体ルテニウムプリカーサーのALD成膜としては、世界最高水準の成膜速度を示した。また、成膜後の比抵抗が約13μΩ・cmと、バルクのルテニウム金属に近い値を得た。
これまで、半導体の配線材料としては、銅、タングステン、コバルトが主原料として使われてきた。半導体のさらなる微細化に向けて、より低抵抗で耐久性が高い貴金属のルテニウムに期待が高まっている。また、トランジスタのゲート用電極やDRAMのキャパシタ用電極などでも、優れた特性をもつルテニウムの検討がなされている。
今回開発した液体ルテニウムプリカーサーは、ルテニウムのバルクと比較してはるかに低温で気化させることができ、段差被覆性に優れたルテニウム膜を効率良く生産できるようになることが期待されるという。