未来の超薄型レンズは日の目を見るか――メタサーフェスを効率的に製造する新手法を開発

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Illustration: Daniel Andrén and Yen Strandqvist

スウェーデンのチャルマース工科大学は、2020年6月11日、メタサーフェスをより効率的に作り出す新しい方法を発表した。この技術では、プラスチックを用いた微細構造作製において、既存の電子線(電子ビーム)リソグラフィー技術を用いたという。研究成果は『ACS Photonics』に2020年3月19日付で発表されている。

過去10年の間に光学分野は目覚ましい発展を遂げている中、カメラレンズ自体は16世紀に発明された最初のプロトタイプから大きな進歩もなく、課題とされていることも解決されずに今日に至っているという。しかし、過去10年の間に、自然界に存在しない反射特性を持つ人工表面であるメタサーフェスに注目が集まってきた。メタサーフェスは、相互作用する多数のナノ粒子で構成され、ナノ粒子が光を制御する。その表面に入射した電磁波の反射位相を制御できる特徴を持つので、極薄の光学素子を作ることができると期待されている。

使用された技術は、確立された技術である電子線リソグラフィーだ。研究者らは、ガラスプレート上に薄膜のプラスチックを設置し、そこに電子線で詳細なパターンを描画した。メタサーフェスの作製には、露光したネガ型電子ビームレジストが材料として使われる。プロセスも比較的シンプルで、スピンコーティング、プリベーク、電子ビーム露光、現像という段取りだ。さらなる材料蒸着やリフトオフ、エッチングは不要で、全工程にかかる時間は数時間だという。

この方法で作られたデバイスは、一般的なカメラレンズと同様に光を一点に集光する役割を担うが、注目すべきはその厚みが従来のカメラレンズより数千分の一と非常に薄く、フレキシブルであることだ。直径10mmの正レンズ(凸レンズ)を含む光学デバイスを作製し、実験では、可視光波長域全体で、パンチャラトナム・ベリー位相勾配の概念に基づく高性能な平面光学系を実証できたという。

メタサーフェスを使った超薄型レンズは、大型の屈折光学系システムや、波長板、アキシコンレンズなど一般的な光学素子に取って替わる可能性があるが、これまでメタサーフェスの大規模製造には高性能な機器が必要であることや工程時間の長さが課題だった。今回開発された手法を用いれば、有害な化学物質を使わずにすむうえ、生産性を数倍に高めることができる。既存の技術である電子線リソグラフィーを用いるので、ナノ製造に取り組む研究所に普及している機器を使うことができることから、より多くの研究者がメタサーフェス研究に取り組み始める可能性があると予測される。

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