- 2021-2-4
- 化学・素材系, 技術ニュース
- 2次元アレイ, カーボンナノチューブ, テラヘルツカメラパッチシート, テラヘルツ帯, フレキシブル非破壊検査, フレキシブル非破壊検査シート, 光熱起電力効果, 東京工業大学, 理化学研究所, 研究, 自己整合性膜技術
東京工業大学は2021年2月3日、同大学科学技術創成研究院と理化学研究所の研究グループが、様々なモノに適用できるフレキシブル非破壊検査シートを開発したと発表した。カーボンナノチューブ膜を材料としたテラヘルツカメラパッチシートを開発し、測定環境に制限されずに様々なモノに適用でき、自由度の高いフレキシブル非破壊検査を達成したという。
テラヘルツ帯を活用した検査技術は、非破壊で測定対象内部の形状/材質の情報を計測できるため、製品の信頼性保証の有力な検査手法として実用化が期待されている。しかし、これまでのテラヘルツ検査技術は大掛かりな測定系が必要で、実地検査には不向きだった。
そこで、熱デバイス設計と自己整合成膜技術により、カメラパッチの開発に必要な技術である検出器の小型化と検出器の二次元配列化を解決し、様々なモノに適用できるテラヘルツカメラパッチシートを作製。配管の詰まり検査や水道管のリアルタイムモニタリングを達成したという。
研究ではまず、フレキシブルテラヘルツ検出器の小型化/高感度化に着手。テラヘルツ光の検出原理は、カーボンナノチューブ膜で発生する光熱起電力効果を利用しており、先行研究では化学ドーピング法によるフェルミ準位の制御を施してきたが、この手法は複数素子により構成されるカメラのようなデバイスには不向きな作製プロセスであるため、新規に性能のばらつきを抑えた作製プロセスを構築する必要があった。
そこで研究では、熱デバイス設計の観点からデバイス構造の最適化に取り組み、電極のアシンメトリー構造化とカーボンナノチューブ膜の発熱部の架橋構造化をすることにより、高い検出感度を保持したままテラヘルツ光の波長サイズまで素子サイズを小型化することに成功した。
次にカメラの作製に向けたデバイス作製プロセスの抜本的改善に取り組み、新規技術を用いて成膜したカーボンナノチューブ自立膜2次元アレイを元に、テラヘルツカメラパッチシートを作製した。
今回、創出した自己整合性膜技術は、ナノ秒パルスレーザーを使用して支持基板となるポリイミドフィルムにマーキングをし、カーボンナノチューブの分散液をレーザー加工済みのポリイミドフィルム越しに滴下する。これにより、マーキング箇所のみ濾過され、自己整合的にカーボンナノチューブ自立膜の2次元アレイを成膜できる。
カメラパッチは、対象の形状に合わせて自由に切り貼りできる。指先やロボットアームに取り付けることでウェアラブル/ポータブルテラヘルツカメラや、検査対象や構造物に貼り付けることでビルトイン/インラインテラヘルツカメラとして使用できるという。
実際に、開発したデバイスを使用した樹脂製品の品質検査やインフラ設備のリアルタイムモニタリングを達成。大幅に既存のテラヘルツ検査技術の適応範囲を拡大できる自由度の高い非破壊検査応用を実証することができた。
今後、フレキシブル非破壊検査シートならではの非破壊検査応用の実証に取り組み、安心/安全で快適な超スマート社会を支える基盤的検査技術としての実用化を目指す。