新たなカーボンスフィア合成方法を開発――原料は安価で安全、製法はスケーラブル

Carbon spheres: microscopy image

英スウォンジー大学は、環境に優しく、より早く、スケーラブルな方法で、カーボンスフィア(微小球状炭素)を作る方法を開発した。新たに開発された方法は、従来よりもシンプルかつ触媒/活性化剤も使わないCVD法(Chemical Vapor Deposition、化学蒸着法)を用いている。研究成果は、『Carbon』に2020年9月1日付けでオンライン公開されている。

カーボンスフィアは、過去10年間で、エネルギーの貯蔵と変換、触媒作用、ガスの吸着と貯蔵、薬物や酵素デリバリー、水処理などの分野で重要な役割を果たしており注目を集めている。また、気候変動への取り組みを支援する炭素回収技術の中心でもある。しかし、カーボンスフィアを作る従来のCVD法は、複雑な工程とコストの面から非実用的であり、炭素回収能力が不十分であるといった欠点があった。

CVD法は化学的な成膜方式で、ガス状の原料にエネルギーを加えて化学反応を起こし、物体表面に薄膜を形成する方法。今回の研究では、ピロメリット酸を固体原料として用い、600~900℃の異なる温度でCVD法を試した。その後、異なる圧力と温度でカーボンスフィアがどれだけ効率的にCO2を回収していたかを調べた。

その結果、カーボンスフィア形成の最適温度は800℃であることが分かった。作製されたカーボンスフィアはその超微細孔によって、大気圧と低圧の両方で、高い炭素回収能力を発揮した。大気圧でのカーボンスフィアによる最高のCO2吸着能力は0℃で約4.0mmol/g、25℃で2.9mmol/gだった。

今回の研究で、ピロメリット酸を用いたCVD法は、従来のCVD法に比べていくつかの利点があることが明らかになった。まず、アルカリを含まず、スフィアを成形するための触媒を必要としない。材料を精製するために溶剤が必要ない。つまり、固体原料を使うことで、危険なガスや液体の原料に依存することがない。CVD法は高い温度が重要な役割を果たすため、固体原料の利用は安全性を高めることにつながる。また、固体原料は液体や気体に比べて扱いやすい。ピロメリット酸は市場で安価に入手できることも利点だ。

研究成果は、炭素回収技術を向上させ、従来のCVD法の代替として、大規模な生産体制に適応する手段になる可能性がある。

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