東レは2021年4月15日、中空糸状の多孔質炭素繊維を支持体とした二酸化炭素(CO2)分離膜を創出したと発表した。表面に薄い炭素膜の分離機能層を有するオールカーボンの2層構造だ。CO2透過量は、これまでの無機系CO2分離膜モジュールと比べ、同一体積で最大5倍になるという。
CO2を分離する技術として、エネルギー消費の少ない膜分離法に注目が集まっている。分離に用いる膜の分離機能層は、1nm以下の超微細な孔を持つ。薄くするほどガス透過性が良くなる反面、耐圧性が低下することから支持体と組み合わせる必要があった。しかし、従来の無機系支持体は固くてもろく、直径を細くできない。そのためモジュールに高密度充填できず、小型化の妨げとなっていた。
そこで同社は、直径300μm未満の中空糸状の多孔質炭素繊維を支持体とし、その表面に数μmの非常に薄い炭素膜の分離機能層を均一に形成。オールカーボンのCO2分離膜を創出した。
この分離膜は、支持体と分離機能層をそれぞれ独立して設計し、優れたCO2分離性能と高耐久性を両立した。また、柔軟で非常に細く、通常の繊維と同じように連続で生産可能。高密度充填できることからモジュールの小型化にもつながると期待できる。
天然ガスやバイオガスの精製にも適用できる見通しで、分離対象のガスに合わせてさまざまな分離機能層を選択できる。水素製造・精製、排気ガスのCO2分離などのガス分離用途へ応用することも可能だと見込んでいる。