都市全体を再生可能エネルギーの供給源や貯蔵庫として利用するコンセプトは、大きな可能性を秘めている。スウェーデンのチャルマース工科大学の研究チームは、建造物全体を再生可能エネルギーの貯蔵庫として利用できる新しいセメントベースの二次電池を開発した。研究成果は、『Buildings』誌に2021年3月9日付で公開されている。
これまでにも金属粉末粒子をセメントに埋め込む方法でコンクリート電池は開発されているが、非常に低い性能しか得られていない。今回研究チームは、導電性と曲げ強度を高めるために金属をコーティングした炭素繊維メッシュを組み込んだセメントベースの二次電池を開発した。コーティングする金属は、正極にニッケル、負極に鉄を用いている。
開発した電池のエネルギー密度は7Wh/m2(0.8Wh/L)であり、従来のコンクリート電池の10倍以上の性能を示した。この性能は市販されている一般的な二次電池と比べるとはるかに低いが、研究チームは、大型建造物であればエネルギー密度の低さはカバーできると述べている。一方、技術的な課題として、開発した二次電池の寿命がコンクリート建造物そのものの寿命に比べて非常に短い点を挙げている。
研究チームはすでにこのコンクリート電池の使用例をすでに想定しており、複層階建ての建物を巨大なエネルギー貯蔵施設として利用できるとしている。充電可能なコンクリート電池を再生可能エネルギーに関する他の技術と組み合わせることで、都市全体を再生可能エネルギーの巨大な供給源に変えることができるかもしれない。