- 2016-8-17
- 化学・素材系, 海外ニュース, 電気・電子系
- Nature, ノースウェスタン大学, ペロブスカイト型太陽電池, ライス大学, ロスアラモス国立研究所
アメリカのロスアラモス国立研究所、ノースウェスタン大学、ライス大学の研究者グループは、結晶成長法を改善して、新しいタイプの2次元ペロブスカイト層の作成に成功し、ペロブスカイト型太陽電池の電力変換効率とその安定性を著しく向上させる道を切り開いた。新しい2次元ペロブスカイト型太陽電池は、従来の2次元ペロブスカイト型太陽電池の3倍以上の電力変換効率を示した。この結果は、7月6日発行の『Nature』に掲載されている。
ペロブスカイトとは、もともとチタン酸カルシウムの鉱物名だが、この鉱物と同じ結晶構造をとる化合物を総称してペロブスカイト型化合物と呼ぶ。高温超伝導を示すセラミック物質にも、この構造をとるものがあり、1980年代から注目を集めてきた。
さらに日本において2009年に、ペロブスカイト型化合物を用いた太陽電池が発明され、世界の注目を集めている。ペロブスカイト型太陽電池は、材料を基板にスピンコートすることによって簡単に作ることができるので、生産コストが大幅に低減できると期待されている。
「結晶方位の制御はずっと悩みの種だった。われわれのブレークスルー技術は、hot-spin-casting技術を使って結晶方位を反転させ、電子が有機カチオンでトラップされずに結晶中を垂直に移動できるようにしたものだ。実際の結晶成長過程で方位を反転させることができたのはこれが初めてのことになる」と、ライス大学の大学院生でロスアラモス国立研究所で研究するHsinhan Tsai氏は説明している。
2次元ペロブスカイト層自体はもともと、ノースウェスタン大学における基板に対し垂直方向の方位を持つ2次元型結晶層に関する研究から生まれた。「2次元ペロブスカイト層はペロブスカイト研究に新しい方向性を開いた」と同大学のMercouri G. Kanatzidis氏。ロスアラモス国立研究所のWanyi Nie氏は、「この新しい2次元ペロブスカイトは、既存の3次元型有機無機ペロブスカイトよりも、一定の照明下で高い効率、そして空気中で高い安定性を発揮する」と述べている。
従来の3次元ペロブスカイトは、注目すべき光物理的特性と20%を超える電力変換効率を持ちながら、光、湿気、熱などのストレス試験で思わしい成果を出せていないという問題があり、これよりも優れたものを見つけることが長年の課題となっていた。
以前にノースウェスタン大学チームが研究していた2次元ペロブスカイトでは、有機カチオンが結晶面方位のズレによる層間の隙間に介在したため、電池の変換効率が4.73 %と低いものだった。しかし、hot-spin-casting技術を用いることにより得られる垂直方位整合性の高い2次元ペロブスカイトでは層間の隙間を無くすことができ、12%の変換効率を達成している。
本プロジェクトの研究責任者であるAditya Mohite氏は、「今後、太陽発電に必要であるだけでなく高効率の発光用途にも使える、単結晶薄膜製造に挑戦して、既存の技術と競争していきたい」と話している。