新型コロナの感染を検出できるフェイスマスクのプロトタイプを開発

Image: Felice Frankel and MIT News Office.

MITとハーバード大学の研究チームは、着用者がボタンを押すだけで、90分以内に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかっているかを診断できるマスクのプロトタイプを開発した。マスクには使い捨ての小さなセンサーが埋め込まれており、呼気中の新型コロナウイルスを検出する。検出結果はプライバシー保護のため、マスクの内側に表示される。このセンサーは白衣などマスク以外の衣類にも埋め込むことができ、他の病原体や化合物にも応用が可能だ。研究成果は『Nature Biotechnology』に2021年6月28日付で公開されている。

今回開発した診断用マスクは、エボラウイルスなどの標的分子に反応して、遺伝子ネットワークを構築するために必要なタンパク質と核酸を紙に埋め込む診断技術と、CRISPRを利用して核酸を高感度に検出する「SHERLOCK」と呼ばれるセンサーシステムを基にしている。センサーの成分は凍結乾燥されており、水を加えることで活性化し、標的分子であるRNAやDNAに反応して色の変化などのシグナルを発する。

研究チームはこれまで、布地にセンサーを組み込んでウイルスを検出するウェアラブルセンサーを開発していた。2020年にCOVID-19が世界的に流行しはじめると、すぐに新型コロナウイルスの診断装置の作成に取りかかった。COVID-19診断用マスクの開発のために、凍結乾燥したSHERLOCKを紙マスクに組み込んだ。センサーはマスクの内側に設置しているため、着用者の呼気に含まれるウイルスを検出できる。マスクには水の入った小さなタンクが付いており、ボタンを押すと水が出てセンサーが作動し、マスクの内側に溜まった呼気の液滴を分析して90分以内に診断する。

「私たちが開発したマスクの検出感度は、現在COVID-19診断で最も精度が高いとされているPCR検査と同等であり、検査に要する時間は迅速分析に用いられる抗原検査と同じくらいです」と、論文の筆頭著者であるハーバード大学のNguyen研究員は述べている。

今回開発したマスクは、内側のセンサーで着用者の感染状態を検知するとともに、外側に設置したセンサーでウイルス環境への暴露検出も可能だ。また、インフルエンザやエボラウイルス感染症、ジカ熱などの病原体や、有機リン酸塩など神経毒を検出するセンサーへも応用できる。

研究チームは、すでにこの技術に関する特許を申請している。責任著者であり今回の研究の基盤技術も開発したMITのCollins教授によると、マスクは本技術の実用化に最も近く、すでに製品化をしたい多くの外部企業から関心が寄せられているという。

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