- 2021-8-18
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- カーボンナノチューブ, カーボンナノチューブファイバー, ゼーベック係数, パワーファクタ, ライス大学, 東京都立大学, 熱電変換, 研究
東京都立大学は2021年8月17日、同大学大学院理学研究科の柳和宏教授と米ライス大学の河野淳一郎教授、Matteo Pasquali教授らの研究チームが、カーボンナノチューブファイバーを用いることで温度差から高効率に電気エネルギーを取り出せることを確認したと発表した。
近年、電気の流れを用いて発熱したデバイスから効率良く排熱するとともに、温度差を電気エネルギーに変換できる材料が求められている。
実現にあたっては、電気の流しやすさを表す電気伝導率が大きく、温度差から発生する電圧の大きさを示すゼーベック係数も大きい材料の開発が必要となる。一方で、通常の金属材料では電気伝導率とゼーベック係数がトレードオフの関係にあり、両立は困難となっていた。
柳教授と河野教授の研究チームは2019年に、金属の性質を示すカーボンナノチューブを用いることで、電気伝導率とゼーベック係数をともに大きくできるという知見を実験により得ている。ただし、カーボンナノチューブの束が乱雑にネットワークを形成した薄膜では、電気伝導率そのものが小さい点が課題となっていた。
そこで今回の研究では、Pasquali教授が開発したカーボンナノチューブファイバーを用いた。同ファイバーは、2層のカーボンナノチューブが一方向に配列した密な構造となっており、106Sm-1以上と良好な電気伝導率を有する。
同ファイバーのゼーベック係数と電気伝導率を確認したところ、電気伝導率が106Sm-1以上であっても、68μVK-1といった比較的大きなゼーベック係数を示すことが明らかになった。ゼーベック係数が約2μVK-1程度である金線などと比較して、10倍の大きさとなる。
結果として、パワーファクタ(熱電出力因子)は14mWm-1K-2と大きな値を示した。冒頭の画像は、今回用いたカーボンナノチューブファイバーとその他の材料との比較を示している。
さらに、ナノチューブファイバーのフェルミエネルギーを電気化学的な手法により系統的に変化させたところ、温度差を与えた時に生じる起電圧が正になるp型にも、負になるn型にも変化させられることが判明した。パワーファクタを双方において最大化するには、適切なドーピングが必要となる。
以上の研究から、カーボンナノチューブファイバーには、温度差を与えることで大きな電力を発生させられる性質があることが明らかになった。
今後は、温度差から電力を発生する仕組みを組み込んだ衣服や、デバイスの熱を高効率で排出するアクティブクーリングといった熱電変換デバイスへの応用が期待される。