半導体の非破壊評価の精度を10倍以上に――高精度テラヘルツエリプソメトリを改良 大阪大ら

大阪大学は2021年9月15日、同大学のレーザー科学研究所と日邦プレシジョンなどの研究グループが高精度テラヘルツエリプソメトリと呼ばれる光学技術を改良し、窒化ガリウム(GaN)ウエハに対する非接触/非破壊による検査の精度を10倍以上も向上させることに成功したと発表した。

研究グループは、日邦プレシジョンが開発したテラヘルツ時間領域エリプソメータ、Tera Evaluatorを用いてキャリア濃度が1020cm-3に達するGaN半導体の評価を行った。この装置では偏光子-試料-検光子という光学配置を使い、検光子の角度を0度から360度まで15度ごとに変えながら波形を取得する。このマルチアングル技術を導入することで、検出されるテラヘルツ電場の強度と位相からシステムエラーを取り除き、誘電率を高い精度で測定できるようになった。また、この装置はテラヘルツ波が透過しない物質でも誘電率を高い精度で測定できる。

この結果、非常に高い伝導率の半導体に対して、優れた精度でキャリア濃度や移動度を評価できるようになり、測定可能範囲も従来の10倍以上に広がった。さらに、この手法は物質内の自由電子を反映したテラヘルツ領域の誘電率から伝導特性を評価することから、GaN以外の炭化ケイ素(SiC)などを使った半導体の評価にも有効となる。

GaNは、5G機器をはじめとする各種光エレクトロニクス、パワーデバイス機器の開発/製造において重要な半導体の1つとなっている。このため、非破壊/非接触による精度の高い検査手法の実用化が期待されている。

研究成果は、日本時間の同日午後6時に英国学術雑誌サイエンティフィック・レポーツのオンライン版で公開された。

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