電気通信大学は2022年2月1日、同大学院情報理工学研究科の研究グループが世界最高の量子ドット密度を実現し、低内部損失で高利得の量子ドットレーザーを開発したと発表した。将来の超低消費電力化、超高速変調の量子ドットレーザーの実現につながる成果だとし、応用物理学会発行の英文論文誌「Applied Physics Express」に掲載された。
従来の量子ドットレーザーの活性層は、光学利得を増やすために量子ドット層を10層程度に多数積層化し、数mmの長い共振器長、高反射ミラーのコーティング膜が必要だった。
これに対し、研究グループは分子線エピタキシー(MBE)により、GaAsSb/GaAs 層上の面内超高密度 InAs 量子ドット層をわずか2層だけ活性層に導入したリッジ導波路型の量子ドットレーザーを試作。総ドット密度1×10 12cm -2という高い量子ドット密度を実現した。これは従来に比べて10倍以上の密度で、世界最高密度となる。また、共振器長を200µm 程度に短くし、高反射ミラーのコーティング膜も施さない構造にした。
この面内超高密度量子ドットレーザーを使って室温でレーザー発振させる実験をしたところ、注入電流がしきい電流の65mAを超えたときに、波長1020nmのレーザー発振を確認。短共振器長の高ミラー損失にもかかわらず、室温で安定したレーザー発振が得られたことについて、研究グループは「高い量子ドット密度によって高利得が達成されたため」と推測している。
また、面内超高密度の量子ドット層であることから、注入キャリアの量子ドットへの取り込み率が高いうえ、量子ドット間の面内結合によって低エネルギー量子ドットへのキャリア注入の効率が高くなることも期待される。
半導体量子ドットは、将来の高度情報化社会を支える革新的な光電子デバイスの構成要素として期待されている。実用化には、高密度で高均一な量子ドットの作製技術の確立が不可欠で、これまでさまざまな作製技術が開発されてきた。
研究グループは、今回開発した技術をもとに量子ドットのさらなる高均一化を進めることで超低消費電力化、超高速変調の量子ドットレーザーの実現が期待できるとしている。