独シェフラーは2022年5月2日、開放形と密閉形の利点を有する遠心ディスクを一体化した特殊な高性能玉軸受を開発したと発表した。遠心ディスクの採用により、内燃エンジンやハイブリッドパワートレイン搭載車のCO2排出量を削減するとともに、電気自動車の航続距離を延長する。
玉軸受は、両側が開いている「開放形」と、特殊ゴムでシールする「密閉形」の2種類があり、それぞれ利点と短所がある。密閉形は、摩耗の抑制につながり、製品寿命の長期化が期待できる転動体や軌道輪への異物の侵入を防止する利点があるが、短所として、エネルギー損失につながる軸受内部の抵抗(シールの摺動抵抗)の大きさがある。開放形は抵抗を小さく抑えられるが、異物が侵入しやすくなるため、損傷する可能性が高くなる。
開発した遠心ディスク一体型高性能玉軸受は、開放形と密閉形のそれぞれが有する利点を活かし、大幅に軸受内部の抵抗によるエネルギー損失を低減。より効率的に運転エネルギーを利用できるため、車両の排気ガス量を低減し、電気自動車の航続距離を延長する。
合成ゴム製のシール板を軸受外輪に取り付ける代わりに、軸受内輪に特殊設計した遠心ディスクを一体化させていることが最大の特徴で、密閉形軸受と同様に遠心ディスクが異物侵入を防止する。遠心ディスクは、どこにも接触せずに回転しているため、これまでの密閉形軸受に比べ抵抗を80%低く抑える。これにより、車両1台あたりのCO2排出量を最大0.3g/km低減する。
動力損失は、最大で30W削減。電気自動車の航続距離を最大1%延長する。サービス寿命は、開放形軸受の最大10倍、これまでの密閉形の2倍。大幅な長寿命化は、軸受やトランスミッションアッセンブリーの小型化にもつながり、材料の使用量や重量の低減に対応する。
新軸受の重さは300g。仕様により異なるが、寸法が直径5~10cmとコンパクトな設計となっている。特許出願中。既に自動車OEM数社で2021年から量産ハイブリッド車やデュアルクラッチトランスミッション車に採用されている。同社は、その他OEM各社向けにも、量産化に向けた開発プロジェクトを進めている。