3Dプリンターを使って人体にバイオプリントできる特殊なレジンを開発

Picture by way of the College of Houston.

ヒューストン大学の研究チームは、バイオセンサーを人体に3Dプリントするための特殊レジンを開発した。多光子リソグラフィにより有機半導体材料を含む樹脂を積層し、生体適合性のある小型回路基板を作るというものだ。研究者はこの手法を用いて高精度のグルコースセンサーを作製しており、さらなる研究開発が進むことで新世代のバイオエレクトロニクスデバイス製造の道が開くことが期待される。研究成果は『Advanced Materials』誌に2022年6月16日付で公開されている。

研究チームは、材料の汎用性と15nmまで可能な高解像度から、多光子リソグラフィは3D加工が可能な微細加工技術の中で最も優れていると考えている。しかし、材料の導電性が低いため、3Dプリントの生体用インプラント材料への応用は限られているのが現状だ。導電性が低い理由としては、デバイス部品の材料に用いられるカーボンナノチューブやグラフェンが無機的な特性を持つため、樹脂を相分離せずに均質に分散させることが難しい点がある。

そこで研究チームはこの課題を解決するために、有機半導体(OS)を添加した均一な特性を持つ透明の感光性樹脂を独自に開発し、3Dプリントによりマイクロコンデンサを配列したプリント基板などさまざまな3D複合微細構造(OSCM)を作製した。作製したOSCMは、従来の多光子リソグラフィを用いて作製する手法と比べて、高い電気伝導度を有していた。

この樹脂に細胞接着やシグナル伝達を促進する糖タンパク質であるラミニンを加えてOSCMを作製し、マウスの組織とともに培養したところ、細胞の生存率は向上しラミニンの機能も保持されていることが確認され、樹脂の生体適合性が示された。

またバイオセンサーとして機能を実証するために、グルコースオキシダーゼを加えたOSCMを作製し、グルコースバイオセンサーを作製したところ、従来のセンサーと比べて約10倍の感度を持つことが示された。

これらの結果から、開発した樹脂のフレキシブルバイオエレクトロニクス、ナノエレクトロニクス、Organ-on-a-Chip(チップ上の臓器)デバイスなど幅広い用途への応用が期待できると研究チームは述べている。

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