17歳の高校生が永久磁石モーターに代わるEV向け高性能電動モーターを設計

世界最大の国際高校生科学研究コンテスト「Regeneron International Science and Engineering Fair(Regeneron ISEF)」を主催するアメリカの非営利団体Society for Scienceは、2022年5月13日、Regeneron ISEF 2022で、米フロリダ州の高校生であり17歳(当時)のRobert Sansone氏が、最も優れた研究に対して授与されるGeorge D. Yancopoulos Innovator Awardを受賞したと発表した。Sansone氏には最高賞金7万5000ドル(約1100万円)が授与された。

Regeneron ISEFには、全米49州、世界63の国と地域を代表する若い科学者たち1750名が参加し、賞金総額は約800万ドル(約11億7000万円)に上った。

Sansone氏の研究プロジェクトは、同期(シンクロナス)リラクタンスモーター(SynRM)のトルクと効率を向上させる新しい設計に関するものだ。SynRMは磁石を使用せず、頑丈かつ効率的なモーターで、従来の永久磁石モーターに代わるものとして注目されている。

現在、電気自動車(EV)用に使用されている最も性能が高いモーターは、トルク特性や効率特性が高い永久磁石を使用した設計となっている。しかし、レアアースを原料とする永久磁石は環境的にも経済的にも持続可能ではない場合が多い。

一方、永久磁石を使用しないモーターとして、SynRMなどがEV向けに研究されている。しかし、SynRMは永久磁石モーターの性能に匹敵するほど磁気的な突極性が高くないため、EV用途として使用するには限界がある。

Sansone氏のプロジェクトでは、磁気的な突極性を生成するために新しい設計アプローチを用いたSynRM構築を目指し、新設計によるSynRMのトルク特性と効率特性が従来設計のSynRMと比較してどのように変化するかを評価した。

まず、異なるローター形状と複数の回転速度で、新しい設計のSynRMのトルクと効率をテストした。新しい設計に基づくSynRMはCADソフトを使用して設計し、主要パーツは3Dプリントした。モジュール方式で設計しており、新設計のSynRMをテストした後で、従来のSynRM設計として再構成して同様のテストを行い、その結果を比較している。

両方の構成で最も高い性能のローター形状を比較した結果、新しいSynRMは、テストした速度範囲全てで、従来のSynRMよりもトルクが約39%大きかった。また、新しいSynRMは、回転数300rpmにおける効率が従来のSynRMよりも約31%向上したが、効率の差は速度に伴って拡大し、750rpmでは37%以上となった。

Sansone氏は、このような性能向上が、磁気的な突極性の改善と相関していることを立証するため、新しい設計が動作する理論的原理を分離した別のテストを実施した。CADと3Dプリントで製作した部品を用いて作製した装置でテストを実施した結果、特に高出力設定において、新しい設計のSynRMでは磁気的な突極性が改善されることが確認できた。このことから、新しい設計はSynRMの磁気突極性を向上させることができ、トルク特性と効率特性の向上とも相関があると結論付けることができるとしている。

SynRMの性能を向上させることで、EV向け永久磁石モーターの代替として使用できる可能性があり、自動車産業の持続可能性を高めることができる可能性があるという。また、新設計のように永久磁石を用いない高性能の電動モーターは、産業機器、宇宙船、ロボットにも応用可能だと考えられる。

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