MIT発、大気中の二酸化炭素を吸着するシステムを開発するスタートアップ

Image courtesy of the Hatton Lab.

二酸化炭素の回収除去技術を開発するMIT発のスタートアップVerdoxにとって、2022年は大きな飛躍の年となった。まず2月にBill Gates氏のBreakthrough Energy Venturesを含む投資家グループから8000万ドルを調達し、その後Bloomberg New Energy Financeによる2022年のトップ・エネルギー・パイオニアの1つとして選出された。

さらに、4月にはVerdoxとパートナー企業のCarbfixは、XPRIZE Carbon Removal milestone awardを受賞し、賞金100万ドルを獲得した。これはマスク財団が4年をかけて実施する、史上最高となる賞金総額1億ドル規模のコンテストの第1ラウンドだ。最終的に、年間1000トン以上の二酸化炭素を除去できる技術を実証し、年間1ギガトンまで拡張するための実行可能なビジョンを提示したグループに、最高5000万ドルを授与することになっている。

Verdoxは2019年に、費用対効果が高く拡張性のある炭素回収技術をもとに、Sahag Voskian氏とT. Alan Hatton氏らによって設立された。コアとなるのは、電気化学反応を利用して大気や排出ガスから直接炭素を回収する技術だ。蓄電池のようなもので、電極にはポリアントラキノンという化合物が塗布されており、充電中は二酸化炭素と親和性があるため気体から二酸化炭素を回収する。電池が充電されると、電圧を上げることで純粋な二酸化炭素を放出できるのだ。

この技術は、二酸化炭素濃度20%以上の鉄鋼業界などの排出ガスから、0.04%の二酸化炭素が含まれる大気まで、幅広い二酸化炭素濃度に対応している。また炭素回収に必要なエネルギー消費が、他の技術と比べて70%削減できることも示されている。また大気中の二酸化炭素をより効率的に除去するシステムも開発中だ。巨大扇風機を何列も並べたようなユニットを設計し、電池の入った箱に空気を送り込むという。

炭素回収システムでは、回収した炭素はどこかに送る必要がある。パートナー企業のCarbfixは、回収した二酸化炭素を鉱物化し、地下深くに堆積させる技術をもつ。そのため、すぐに再利用できない二酸化炭素の処分も問題ないという。

Verdoxは、ノルウェーのアルミ生産企業Hydroが、初の商業的クライアントとなると発表している。Hydroは、工場の排気から二酸化炭素を完全に除去する、ゼロカーボンによる生産を目指している。

Voskian氏は、「我々のコア技術はこれまで性能評価により検証してきたが、今回の外部評価は当社のビジョンをさらに実証するもので、我々の選んだ道が正しいことを示しています」と述べている。そして、「世界が炭素回収技術を受け入れるのは正しい道です。パートナーと共に世界規模で製造設備を展開し、私たちが生きているうちに、二酸化炭素問題に一石を投じることができるでしょう」と述べている。

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