世界最高レベルの発電性能を持つマルチナノポア発電素子を開発 阪大ら研究G

大阪大学は2022年10月13日、同大産業科学研究所らの研究グループが、逆電気透析発電において最適なマルチナノポア素子構造を明らかにし、世界最高レベルの発電性能を持つ逆電気透析膜の開発に成功したと発表した。

逆電気透析発電は海水と淡水から再生可能エネルギーを得る手法の一つとして世界中で研究開発が進められている。発電には、ナノポアと呼ばれる極薄な膜に加工されたナノメートルスケールの細孔を用い、陽イオンまたは陰イオンのどちらかだけがよりナノポアを通りやすくなるイオン選択性という性質を利用する。

具体的には、膜の片側を高濃度の塩水、反対側を希薄な塩水で満たすと、濃度拡散によってナトリウムイオンや塩素イオンがナノポアを移動。このとき、ナノポアの壁面が負の電荷を帯びていると、陰イオンである塩素イオンは壁面で電気的に反発し、ナノポアを通過できなくなる。一方、ナトリウムイオンは陽イオンのため、壁面で反発されることなくナノポアを移動できる。これによって、負電荷を帯びたナノポアは、正の電荷を持つナトリウムイオンだけを通過させることになり、膜の間に電圧が生まれ、電気を取り出せるようになる。

今回の研究で同グループは、半導体技術を用いて、ナノポアの構造と配置を系統的に変えながらナノポア発電素子の性能を評価することで、マルチナノポアの性能劣化の原因を探った。その結果、ナノポアを密集させるとナノポア間で干渉が起き、発電効率が著しく低下することを発見。その結果をもとに窒化シリコン膜中に最適な集積度(100億個/cm2)で加工した直径100ナノメートルのマルチナノポア構造を作製し、100W/m2という世界最高レベルの発電性能を達成した。

これまでの研究では、1個のナノポアでMW/m2レベルの極めて高い発電性能が得られるなどの成果が報告されている。ところが、複数のナノポアを高集積させたマルチナノポア構造になると性能が落ち、せいぜい数W/m2に留まることから、複数のナノポアでは性能が劣化するメカニズムの解明が実用化に向けた課題となっていた。

研究グループによると、今回の膜の作成には、ナノポアの加工を容易にするために窒化シリコンを採用したが、発電に最適な膜材料を研究することで、さらなる性能向上が期待できるという。

研究成果は22年10月7日、米国の学術雑誌Cellの姉妹誌Cell Reports Physical Scienceで公開された。

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