GSアライアンスは2022年12月26日、有毒な酸や有機溶媒を使わず「天然深共晶溶媒」を用いてレアメタルをリサイクルする技術を開発したと発表した。
EVや携帯電話などの普及に伴い、リチウムイオン二次電池を構成するレアメタルの安定供給が課題となってきている。その解決策の1つとしてリチウムイオン電池のリサイクルへの取り組みが進んでいる。しかし従来のレアメタル分離回収技術では、有毒な酸の廃液や有機溶媒使用による環境負荷の増大、また、作業時の危険性などが課題となっていた。
今回同社は、従来の硫酸などの無機酸や有機溶媒に代わって、同社が合成する天然深共晶溶媒を用いて、リチウムイオン電池の正極、および破棄されたリチウムイオン電池から取り出したブラックマスから、コバルトやニッケル、マンガンなどのレアメタルを抽出する技術を開発した。
深共晶溶媒(Deep Eutectic Solvent:DES)は、イオン液体と類似した性質を持つ溶剤で、ルイス酸またはブレンステッド酸と塩基の共晶混合物から形成される。熱安定性や電気化学的安定性が高く、無害なことが多い。また、イオン液体よりも低コストであることも特徴だ。今回のレアメタル抽出の他に、電池用電解液や、アルカロイドなどの抽出、ガス吸着などの利用用途がある。今回用いられた天然深共晶溶媒(Natural Deep Eutectic Solvent:NADES)は、天然成分から作られる深共晶溶媒で、特に環境負荷が低い。