ねじると電気を起こすハイテク繊維「ツイストロン」

テキサス大学ダラス校を中心とする研究チームは、ねじったり伸ばしたりすることで電気を発生させるハイテク糸の改良に成功した。構造がウールや綿糸とよく似たこの「ツイストロン(twistron)」と呼ばれるハイテク糸の改良に関する研究成果は、『Nature Energy』誌に2023年1月26日付で公開されている。

2017年に初めて報告されたツイストロンは、太さが毛髪の1万分の1という極細のカーボンナノチューブの繊維で構成されている。初期のツイストロンは、カーボンナノチューブをより合わせて伸縮性のあるコイル状にし、引っ張ったりねじったりすることで機械的エネルギーを電気に変換した。

研究チームが改良したツイストロンは、コイル状ではなく、一般的な撚糸と同じような形でカーボンナノチューブ繊維を3本より合わせて作製した。ただし一般的な撚糸は、個々の繊維を一方向により合わせてから、それらを逆方向により合わせることで全体の糸を作るが、ツイストロンは個々の繊維のよりと同じ向きに3本の繊維をより合わせて糸にしている。

改良前のコイル状ツイストロンのエネルギー変換効率が引張、ねじり共に7.6%であったのに対し、改良版のツイストロンは引張が17.4%、ねじりが22.4%と高いエネルギー変換効率を示した。改良版ツイストロンは、2〜120Hzの周波数において、報告されている機械エネルギーハーベスティングの中で、重量あたりの出力が最も大きい。

この高いエネルギー変換効率は、糸を引っ張ったりねじったりしたときに、密度が低くなるのではなく横方向に圧縮されて密度が高くなるためだと見られている。カーボンナノチューブがより接近することで、エネルギー捕集能力が向上するとしており、メカニズムの詳細については今後解明する予定だという。

3本鎖のツイストロンを用いた実証実験は、すでに実施されている。海の波による発電を想定した実験では、水槽内に並べたツイストロンにより、小型発光ダイオードやデジタル時計の駆動に十分な電力を供給できた。またツイストロンを縫い付けた綿布を肘に巻いた実験では、肘の曲げ伸ばしを繰り返すことで電気信号が発生し、ツイストロンが人の動作により発電できる可能性が示された。

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