5Gの10倍の高速通信も――テラヘルツで作動するメタデバイスを開発

EPFL/Youtube

スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)の研究チームは、サブ波長スケールでメタ構造を設計する新しいエレクトロニクスへのアプローチを考え出した。これにより、大量のデータをやり取りするための次世代超高速デバイスが誕生し、6G通信やそれ以降に応用される可能性がある。

これまで電子デバイスの高性能化に対するアプローチは、主にトランジスタなどのデバイスの微細化に集中してきたが、微細化が進んだ今日、出力電力や抵抗値などの電気的特性の低下が無視できなくなっている。

EPFLの工学部パワー&ワイドバンドギャップ・エレクトロニクス研究室(POWERlab)のElison Matioli氏は、「例えば、窒化ガリウムを用いた材料の場合、動作周波数で最高のデバイスは、すでに数年前に発表されています」と言う。「デバイスのサイズを小さくすると、根本的な限界に直面します。これは、使用する材料に関係なく言えることです」とMatioli氏。

この課題に対し、Matioli氏と博士課程学生のMohammad Samizadeh Nikoo氏は、これらの限界を克服し、新しいクラスのテラヘルツデバイスを実現できるエレクトロニクスへの新しいアプローチを考え出した。窒化ガリウムと窒化インジウムガリウムからなる半導体に、メタ構造と呼ばれるパターニングされた接点を波長以下の距離にエッチングし、デバイスを縮小するのではなく、配置を変えたのだ。このメタ構造により、デバイス内部の電界を制御することができ、自然界には存在しないような驚異的な特性を実現した。

このデバイスは、テラヘルツ帯(0.3〜30テラヘルツ)の電磁波で動作することができ、現在の電子機器に使われているギガヘルツ波よりもはるかに速い周波数で動作する。そのため、より多くの情報を伝達することができ、6G通信やそれ以降のアプリケーションに大きな可能性をもたらすという。

現在市販されている最先端のデバイスは、最大2テラヘルツの周波数を達成しているが、POWERlabのメタデバイスは20テラヘルツに達するという。同様に、テラヘルツ帯付近で動作する従来のデバイスは、2V以下の電圧でブレークダウンする傾向があるが、メタデバイスは20V以上をサポートすることができる。これにより、現在よりもはるかに大きなパワーと周波数でテラヘルツ信号の伝送と変調が可能になる。研究チームはテラヘルツ帯の周波数で最大100ギガビット/秒のデータ伝送を実証したが、これは現在の5Gの10倍に相当する。また、出力電力は従来のデバイスの20倍にも達したという。この研究成果は、2023年2月15日付の『nature』誌に掲載されている。

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