大阪府堺市に本社を置く堀内機械は、油圧シリンダの総合メーカー。通常2~3週間といわれる標準品の納期を4日間に短縮してみせる、廃材を活用して「廃材文化祭」を実施するなど、チャレンジ精神と自由闊達な社風が特徴の会社だ。
同社の2016年に向けたビジョンは「楽しくワクワク」。「機械が大好き」という技術部 設計の高木香奈さんは、30歳を過ぎてから未経験だった機械設計に興味を持ち、キャリアチェンジを決意したエンジニア。真剣に前向きに、楽しくワクワク仕事をしている。
(執筆: 杉本 恭子、撮影:築地 久)
使用環境や条件に合わせて油圧シリンダを設計
――最初に、油圧シリンダとはどういう仕組みのものなのか教えていただけますか。
パスカルの原理を応用したもので、油に圧力を掛けることで重たいものを動かす仕組みです。簡単に説明すると、管の片方に断面積の狭い細いピストン、もう片方に断面積が10倍のシリンダを付けます。中を油で満たしておくと、細いピストンを1の力で押せば、シリンダ側には10の力が伝わって重たいものを持ち上げることができます。身近なところでは、歯医者さんや美容院の椅子、病院のベッドを上下させる仕組み、また遊園地の乗り物などに使われています。大きな力が必要なフォークリフトやクレーン、ショベルカーには欠かせない部品ですし、大きいものでは水門の開閉などにも使われています。直接目にすることはあまりありませんが、工作機械から遊技機器まで、かなり多くの機械に使われている部品です。
――では高木さんは、どのような仕事をしているのですか。
私は、お客様からご注文いただいた商品を設計するグループに所属しています。当社のカタログに掲載している標準品・準標準品のカスタマイズが主な仕事です。標準品をそのままお使いになるお客様はほとんどありません。お客様から届くさまざまな要望に応えるため、正確に速く図面を描くことが求められます。
油圧シリンダは奥が深く、屋内か屋外か、ホコリが多い環境か、水に濡れる可能性があるかなど、使用環境や条件によって、形状や材料を変えなければなりません。毎回毎回違うので、そこにおもしろさを感じています。
「この仕事って楽しい!」
――多くの条件を組み合わせて最適な設計をするのは、とても難しそうですね。
ちょっとでも考え違いや見落としがあると、ピストンが入らないとか動かないということが起こり得る世界です。お客様のご予算も考えながら設計し、最後はすべての部品図と組立図を並べて、集中して1つ1つチェックします。
私が描いた設計図は工場に送られて、加工、組み立てという工程に進みます。私がミスをするとお客様はもちろん、自社工場や営業に多大な迷惑がかかります。ですから、工場からの電話、特に最終工程の組み立て担当者からの電話は本当に怖いです。時には怒られることもありますが、経験を積みながら、徐々に成長していると実感できています。
――でもそういう難しさも含めて、楽しく取り組んでいるように見えます。
「お客様のご希望にどれだけ近づけられるか」「どれだけお客様のお役に立てるか」と考えながら、部品や材料を選定して設計していくのは楽しいです。常に考えて、考えて、頭を使っていること自体もおもしろいですし、どんどん勉強して、改善して、次につなげられるのはとてもやりがいがあります。
営業から「お客様が喜んでくださっている」などと聞いたときには、本当に「この仕事って楽しい!」と思いますね。