入社3年目で自動運転の実現に欠かせないLiDAR開発のコア技術を担う、機械とソフトウェア2軸のスキルを持つエンジニア___メイテック 藪 智明氏

株式会社メイテックは、日本の製造業に向けてプロフェッショナルなエンジニアによる設計・開発業務のソリューションサービスを提供している企業だ。今回紹介する藪 智明氏は、2021年に機械系エンジニアとしてメイテックに新卒入社し、1年目から自動運転の実現に欠かせないLiDAR(Light Detection And Ranging)の開発・評価の業務に携わっている。若手ながら派遣エンジニアとして顧客のコア技術に携わり、機械とソフトウェアの領域で技術を提供している藪氏は、エンジニアという職業の魅力や、派遣エンジニアとして働くことをどのように捉えているのだろうか。(執筆・撮影:編集部)

──藪さんがエンジニアを目指したきっかけを教えてください。

[藪氏]小学生になる前からH-IIロケットの落書きをしたり、宇宙の図鑑を読んだりすることが好きで、ロケットや飛行機など、空を飛ぶものに興味を持っていました。今思い返すと、高校生の物理、化学、生物の授業選択で、得意だった生物ではなく物理を選択したのは、エンジニアという職業を意識したのかもしれません。大学に進学する頃には、もっと具体的な目標として、航空宇宙に携わるエンジニアになりたいと考えるようになっていました。

──大学では機械工学を専攻されていますね。どのような知識を学んだのでしょうか?

[藪氏]大学では機械力学、流体力学、熱工学、材料力学、SOLIDWORKSを使った製図など、ものづくりで必要になる幅広い知識を習得しました。最近は機械系の学科でもソフトウェアやプログラミングの授業が必修になっていて、私もPythonやC言語を使ったプログラミングをしていました。

──大学での研究内容を教えてください。

[藪氏]私はプロペラ飛行機が好きでピストンエンジンに興味があったので、それに一番近い自動車のエンジンを扱う研究室を選択しました。研究テーマは「ガソリンエンジンの燃焼制御モデル構築」。ガソリンエンジンは通常、回転数やトルクなどの条件に応じて、ガソリンの噴射や点火タイミング等の操作量をあらかじめ決めておくものです。しかし、最近のエンジンではアクチュエータの数が増えていく傾向にあるので、膨大な運転条件ごとに操作量を決定するには工数が増加してしまうという課題がありました。その課題を解決するために、実物のエンジンの挙動をコンピューター上で計算できる数式の形に落とし込むモデル化を行い、エンジンが1回転するごとにその時の状態を計算して、様々な運転条件でも最適な燃焼効率を実現できるように制御するのが、この研究の目的です。

私はMATLAB上で物理式とニューラルネットワークを組み合わせてモデル化をし、それに加えて実機の挙動に近付けるためのパラメータ調整を行いました。研究内容が一般的なニューラルネットワークと比べると特殊だったこともあり、先輩が作ったコードを流用しながらニューラルネットワークのコードをMATLABで全部書き下していたので、ニューラルネットワークやMATLABなどの使用方法をしっかりと理解することができました。

──その後、大学院に進み、就職活動が始まったのですね。

[藪氏]大学院でも研究を続けていたのですが、ここでプログラミングの面白さに目覚めまして……。教授から「今後は機械系エンジニアでもプログラミングの技能は必須だ」と言われたこともあり、システム開発を手掛ける会社でプログラミングのアルバイトをしてPythonを学びました。CADを触るのも好きだったので、将来は機械とソフトウェア2軸のスキルを持つエンジニアになれれば、何か面白い仕事ができるのではないかと考えるようになりました。

就職活動では航空宇宙系の企業を志望したものの、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、志望していた業界の先行きが不透明になってしまいました。そんな状況の変化もあって、ものづくりの仕事であれば業界にこだわる必要もないのではないか、と思うようになったのです。

「エンジニアのスペシャリスト」を目指せるメイテックとの出会い

──そんな中で出会ったのがメイテックだったのですね。

[藪氏]はい。会社説明会で話を聞く機会があり、リクルーターの方から定年まで設計開発の最前線で仕事ができる「生涯プロエンジニア(R)」を数多く輩出していることや、派遣エンジニアとして航空宇宙系の仕事に携わることもできると聞いて興味を持ちました。

今は終身雇用も崩れてきていますから、1社に居続けることはないだろうと考えていたので、エンジニアという職業を軸に多くの企業で活躍できる派遣という働き方もいいのではないか、と思ったのです。自分で転職活動をすれば時間もお金もかかりますが、メイテックなら専門の知識を持った営業職の方がキャリアプランを一緒に考えてくれて、そのプランを実現できる新しい配属先を探してくれます。また、変化の激しいこれからの時代でエンジニアとして生き残るためには、世の中から必要とされるスキルを学び続ける必要があります。そうなると、定年まで設計開発の最前線でスキルを磨けて、エンジニアのスペシャリストを目指せるメイテックが、自分の理想に近いと感じたのです。その後、メイテックから内定をもらい、機械系エンジニアとして社会人生活をスタートすることになりました。

>>生涯プロエンジニア(R)インタビュー(メイテック コーポレートサイト)

──入社後から配属、業務開始まではどんな流れになっているのですか?

[藪氏]入社後、まずは社会人として、そしてメイテックのエンジニアとしての基礎を学ぶ研修を受講します。ここでは基本的なマナーや機械系の技術研修、グループを組んで取り組むものづくり研修などを通じて、お客様先で業務をするための技術力と人間力を習得します。研修と並行して、全国の営業職の方が配属先を調整してくれるので、「配属先が決まったらスキルを積み上げて成果を出そう!」と、意気込んで連絡を待っていたのですが、決定した配属先は「自動運転・補助機能向けのLiDAR開発と評価」。新卒でいきなり最新技術の開発に携われるとは思っていなかったので、とてもびっくりしました。

LiDARとはレーザー光を照射して、その反射光の情報を基に対象物までの距離や対象物の形などを計測する技術で、観測精度の高さから自動運転向けに活発な研究開発が行われています。世の中の自動運転への関心は高く、それを実現するために必要なLiDARも注目技術だったので、ぜひ挑戦したいと伝え、正式に配属が決定しました。

大学で学んだ機械とソフトの知識が活きた、初めての業務

──配属先ではどんな業務を行っているのですか?

[藪氏]光学のチームに所属することになり、LiDARに使われる部品の簡単な評価業務からスタートしました。2カ月程は評価業務が中心でしたが、ある時、先輩エンジニアがPythonで作っていた、LiDARが取得したデータを変換するプログラムに触れる機会がありまして、そこで自分から「Pythonなら自分もできます、ライブラリを見てもいいですか?」と声を挙げたのです。大学で学んだ知識が活かせて、お客様の役に立てるかもしれない、という想いもありました。すると、お客様もPythonに関わる仕事を徐々に任せてくれるようになり、気が付いたら機械系エンジニアでありながら、チームの中でソフトウェア担当のような立ち位置になっていました(笑)。研究室やアルバイトでPythonをしっかり学んできた経験が活きて、学生時代に勉強しておいてよかったと実感しています。

今のメインの業務はPythonを使ったデータ解析とLiDARモデルの改良ですが、性能を評価するための実験や光学シミュレーション、実験計画の立案やデータ解析、資料作成、実験で使用する治具の設計など、機械とソフトウェアの2軸で、幅広い業務に携わっています。

──与えられた仕事だけでなく、自ら新しい業務に挑戦しようと思ったのですね。藪さんが業務をする上で心掛けていることを教えて下さい。

[藪氏]私はお客様の状況を自分なりに把握して、「自分なら対応できそうだ」と思った仕事があれば、積極的にやらせてほしいとお願いするようにしているので、「業務に必要な知識や手順などを自ら学ぶ」ことを心掛けています。他にも、「依頼された仕事は絶対に断らない」、「業務で改善につながりそうなことがあれば、根拠と共に意見を伝える」ことも意識して実践しています。まだ3年目の若手の意見ですが、それを聞き入れてくれるお客様にはとても感謝しています。

今は光学チームの中で、LiDARのモデル化を担当していますが、チームメンバーにはこの部分に関する知識があまりない方もいらっしゃるため、自分が得た知見をしっかりと資料に残し、お客様に伝えきることも心掛けていることの一つですね。

──機械とソフトウェア両方の知識を持っていたからこそ、幅広い業務を任されているのですね。これは藪さんのエンジニアとしての強みとも言えるのではないでしょうか。

[藪氏]確かに、機械とソフトウェアの知識を持っていることもそうですが、知識を持っているだけでは仕事は任せてもらえません。「自分から仕事を取りにいく積極性」と「経験のない新しい業務にも積極的にチャレンジできる」ことも、今の私の強みだと思っています。

藪さんが入社後の研修時代から残している技術ノート。
3カ月に1冊ペースで増えているそう

業務を経験して思う、「派遣の働き方」と「メイテック」の魅力

──普段はお客様の社員と業務をしていますが、メイテックの社員とはどんな交流がありますか?

[藪氏]同じ課にはメイテックの先輩がいないので、業務上の関わりは少ないですが、社内で開催している様々な研修でメイテックの社員と顔を合わせています。メイテックには社内のキャリアサポート部門が用意してくれる研修の他にも、所属拠点に居る、社員同士のつながりの強化やキャリア形成をサポートしてくれるマネージャーが企画する、特定の地域や業種、職種向けの勉強会があります。私も新しいつながりづくりや必要なスキルを得るために頻繁に参加しています。

参加した中で印象に残っているのは、AIをテーマとした技術研修です。その研修には全国の拠点からAIに興味関心を持つエンジニアが集まり、互いに切磋琢磨しながら知識を深めることができました。自分で研修を企画するような人たちが数多く参加していたので、社内には凄い技術力と人間力、そしてモチベーションを持ったエンジニアがたくさんいることに刺激を受けました。

藪さんが参加したAIをテーマとした技術研修の成果発表会の様子。オンライン上に多くのエンジニアが集まり、技術力を高め合っている

>>エンジニアの教育・研修(メイテック コーポレートサイト)

──社内にはエンジニア同士で技術力を高め合う仕組みがあるのですね。藪さんはメイテックという会社の魅力はどんなところにあると思いますか?

[藪氏]多くの製造業のお客様と取引があり、最先端の技術や製品、技術のコアとなる業務を任せてもらえることだと思います。私が今携わっているのもお客様のコアになる技術ですが、入社前はこんな重要な仕事をいきなり任せてもらえるとは思いもしませんでした。若手のエンジニアにもこうした機会が多くあることが、メイテックという会社の魅力だと思います。

──エンジニアとして3年目に入っていますが、これまでの経験から派遣という働き方の魅力をどう捉えていますか?

[藪氏]「1社の視点に囚われなくていい」ことだと思っています。メイテックの社内では異なる業界や技術分野で働くエンジニアと接点を持てるので、必然的に外部の環境に目を向けることが多くなります。会社からも世の中の技術トレンドに関する情報が頻繁に提供されるので、自分の今の環境と照らし合わせて、今後のキャリアを考える良いきっかけになっています。私自身が1社に居続けることはなく、常にスキルを磨き続ける必要があると考えているので、この働き方を選んで良かったと思っています。自分の進むべきキャリアを考えるのは難しいことだと実感していますが、一緒にキャリアを考えてくれるコーディネーターや拠点長もいるので、しっかりとキャリアと向き合っていきたいです。

──エンジニアという職業の魅力ややりがいをどう捉えていますか?

[藪氏]自分の頭の中で思い描いたことをリアルに具現化できることが、エンジニアという職業の魅力だと思います。今、私が携わっているLiDARはチームの人たちが設計したものですが、私もモデル化や実験、評価、治具設計などに関わっているので、実際に出来上がった製品を手にとって仕組みを知ったり、動くところを見たりできるのは楽しいですし、とてもやりがいを感じています。

──最後に、今後のご自身のキャリア形成に関する考えを聞かせてください。

[藪氏]「機械とソフトウェア2軸の知識を持ったエンジニアになる」という大きな方向性は変わりません。しかし、現状は機械系の技術知識や業務経験が不足していて、Pythonを始めとしたソフトウェアの知識も対応できる領域が限定的です。ですから、まずは自分の中で核となる技術を定めて、それを自分のものにできるよう、これからも学習と業務経験を積み上げていきたいです。

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