多重CRISPRによるゲノム編集を施した持続可能な木材を開発

ノースカロライナ州立大学の研究チームが、多重CRISPRによるゲノム編集をポプラの樹木に施すことで、パルプ製造過程で生じる温室効果ガスや化学廃棄物の原因を減らせる、持続可能な木材を開発した。

同研究成果は2023年7月13日、「Science」誌に掲載された。

われわれの生活の必需品である紙製品の生産は、古紙や木材繊維のパルプを原料とする。木材中には木の強度を保つリグニンという成分が大量に存在し、木材パルプ製造では、木材からリグニンを分離する必要がある。大量のリグニンが副産物として発生し、温室効果ガスの排出原因となる。また、リグニンの処理のために、生産物とほぼ同量の化学廃棄物も発生するという。

ゲノム編集技術であるCRISPR編集は、最近開発された効率の高い手法であり、2020年にノーベル化学賞を受賞した技術だ。従来技術より遺伝子を操作するスピードとスループットが格段に向上し、同時に複数の遺伝子操作による多重編集も可能とする。

研究チームは、ポプラの樹木におけるリグニンの生合成について、以前に確立した計算予測モデルを用いて、リグニン含量を減少させ、炭水化物/リグニン比を増加させるための標的遺伝子を同定した。そして、リグニン合成遺伝子に関する遺伝子改変の組み合わせを多重CRISPR編集のために選択して174の編集ポプラ変種を作製し、木材特性を評価した。その結果、木材の炭水化物対リグニンの比率が野生型の228%にまで増加し、より効率的なパルプ化が可能になることが分かった。

現在のところ、ヨーロッパなどでは規制により、遺伝子編集樹木の市場導入を制限、または禁止している。しかし、CRISPR編集木材は、歩留まりと生産効率を向上し、生産過程の地球温暖化係数を最大20%削減すると推定されており、ベネフィットを考慮すべきであるという意見も出ている。

関連情報

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る