- 2023-8-24
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株式会社メイテックフィルダーズは、ものづくりの要となる設計・開発から、試験・評価・解析、生産技術、品質保証、フィールドエンジニアリングの領域に、プロフェッショナルなエンジニアによる派遣サービスを提供している企業だ。
山崎 一彦氏は1991年4月に、新卒でメイテックフィルダーズ(当時は株式会社ジエクス)に入社し、32年間の間に3社のお客様での業務を経験している。特に半導体領域のシステム、ツール開発の経験は約29年に及び、長期にわたってお客様の信頼を獲得し続けている。キャリアの中では自身の専門分野を変更するなど、幅広い技術分野で挑戦を続けている山崎氏に、これまでのキャリアやエンジニアという職業、メイテックフィルダーズの魅力について、語っていただいた。(執筆・撮影:編集部)
──山崎さんはどんなきっかけからエンジニアを目指したのでしょうか?
[山崎氏]私は小さい頃からコンピューターに対する憧れがあり、将来パソコンを巧みに操るようになる姿を夢見ていました。しかし、私が小中学生の頃はまだまだ高額な製品で、家庭への普及は進んでいませんでした。実際に触れるようになったのは情報処理の専門学校に入ってからで、この道に進んだのは、この憧れがあったからだと思います。
自分の手を使ったものづくりも好きでしたが、それ以上にパソコンを使って情報を処理することに興味があったので、自然と情報処理系のエンジニアを目指すようになりました。
──就職活動ではどんな点を重視されたのでしょうか?
[山崎氏]就職活動では、多様なシステム開発に携わることができる会社であることを重視しましたが、大きなこだわりはなかったですね。と言いますのも、この時期はバブルが弾ける直前で売り手市場の真っただ中。加えて、どの企業もシステム開発に力を入れ始めていたので、就職には苦労しないだろうと考えていたのです。
そんな就職環境の中、いくつか採用試験を受けた会社の中に、メイテックフィルダーズ(当時は株式会社ジエクス)がありました。今振り返ると、この後経験するバブル崩壊、リーマンショックなどの危機を乗り越えられたのは、変化する時代の中で、その時々にエンジニアを必要とする業界で働き続けることができる「派遣」という業態であったからだと思います。当時採用試験を受けた中で、まだ会社が残っているのはメイテックフィルダーズだけですから、ここを選択した私は運が良かったのかもしれませんね。そして、1991年4月に、組み込み系エンジニアとして新卒入社し、エンジニア人生のスタートを切りました。
エンジニア人生のスタートを切り、システム開発エンジニアとして基礎を学ぶ。
──厳しい景気の中でもエンジニアを必要とする業界があり、派遣だからこそ、特定の業界に依存することなく仕事ができたということですね。山崎さんは入社後、どのような仕事を経験されましたか?
[山崎氏]入社後、すぐに横浜の営業所に配属が決まり、同時にお客様先への配属も決定しました。担当したのは、特殊な船舶で使用する情報システムのデータ分析用シミュレータの開発。私が担当したのは試験、評価、仕様書の製本や翻訳などの付帯業務でした。当時はまだWindowsもない時代ですから、当然Excelもなく、表計算ソフトを使って分析を行い、BASICでプログラムを作成していました。初めての業務ということもあり、お客様先の上司や先輩の後について、まずは仕事のやり方を覚える2年間でしたね。
──1社目では仕事の基本を学んだということですね。その後は、どういった業務に携わったのですか?
[山崎氏]次は同じお客様先の別事業所に異動して、訓練システムの端末と制御計算機のインターフェース制御に携わりました。ここから本格的に開発の業務に入っていくことになります。
業務はお客様先の課長と私を含む5人で対応していました。組み込み系のシステムだったので、C言語やアセンブラでプログラムを書き、それをROMに焼きこんで68000CPUで実行していました。
これまで開発業務の経験がなかったので、技術的にはかなり未熟だったと思います。そんな私を気にかけて、エンジニアとして育ててくれたのが、お客様先の課長でした。この方からは、私のシステム開発における基本姿勢である「ドキュメントをしっかり残す」、「考えや理解を言葉や形に表す」ことを教えていただきました。
当時は課長から指導を受けて、設計用紙にブロック図やIPO(Input Process Output)図、フローチャートなどをひらすら書いていました。これは単にドキュメントを残すためではなく、「自身の考えや設計に間違いがないか検証する」、「開発後の保守の人たちへ必要な情報を正しく伝える」ことの必要性を学び、身に付けるためだったのです。おかげで開発を引き継ぐ場面でも、自身の理解を深めるために「先ず書いてみよう」という行動が身に付き、今でも業務の役に立っています。
ここでは1年程業務をしましたが、地元の九州で仕事があると声をかけてもらっていたことから、お客様に相談して業務を終了し、福岡の営業所へ異動することになりました。こうして、システム開発エンジニアの基礎を教えてくれたお客様先の業務を終えて、新たに半導体の仕事に挑戦することになったのです。
半導体領域への挑戦。技術力とヒアリング力を磨き、開発の上流工程へ。
──半導体は未経験の領域ですね。ここでの業務内容を教えてください。
[山崎氏]福岡に戻ってすぐに、半導体製造装置を手掛けている企業に配属が決まりました。私が担当したのは、洗浄装置用ソフトウェアのカスタマイズ設計です。コアとなる開発プログラムは既にある中で、例えば、ウェハーを特殊な方法で洗浄したいとか、自社に自動搬送の仕組みがあるので、そのシステムに合うようにインターフェースを調整してほしいなど、個々のお客様の要望に合わせてコアのプログラムに必要な機能を実装していく仕事です。
C言語をメインとしたプログラミングの業務が続いていたのですが、5年程経った頃に、配属先のお客様から「顧客と直接話をして、仕様を決める業務をやってみないか?」と声をかけていただきました。プログラミングをしながら要件定義や機能設計などの上流工程に携わるチャンスだったので、「ぜひやらせてください!」と飛びつきましたね。
──お客様からそうした声をかけてもらうということは、山崎さんのアウトプットや業務姿勢が評価されたということでしょうか?
[山崎氏]そうですね。上流工程を任せてもらえたのは、「山崎ならここまでできるだろう」と信頼してもらえたからだと受け止めています。システム開発では、お客様が何を求めていて、どんな機能を欲しているのかを正確に聞き出すヒアリング力が不可欠です。技術力だけでなく、ヒアリングや調整力をお客様が評価してくれたのだと思います。
──技術力に加えて、ニーズを聞き出すヒアリング力が評価を高めた秘訣なのですね。この配属先ではどのように成長できたと考えていますか?
[山崎氏]カスタマイズ設計に対応しつつ要件定義を行ったことで、自身の業務範囲が広がって開発工程全体を意識するようになり、業務に対する責任感が強まりました。
その他にも、お客様先の製造装置はグローバルで販売していたので、グローバルのビジネス視点を得られましたし、英語のスキルも得ることができました。これまではシステム開発のスキルだけに注力していましたが、アメリカやドイツへの出張も経験して、「今後は英語を使用できるエンジニアにならなければいけない。英語は大きな武器になる」と、強く実感するようになったのもこの時期です。英語の学習は今も継続しています。
世の中の変化に合わせ、専門分野をITに変え、新しい業務に挑戦。
──業務範囲が広がり、沢山の成功や失敗の体験を得て、お客様からの信頼も獲得していた配属先だったと思いますが、その後別の業務に移られていますね。
[山崎氏]はい。30代中盤の頃に、営業所の所長から「この先のキャリア形成を考えて、違う業務で新しい技術やスキルを獲得してみないか?」と提案を受けたのです。私自身は仕事が面白かったのでこのまま続けたいという気持ちが強かったのですが、また新しい経験が得られる良い機会だと捉え、会社からの提案を受けることにしたのです。そして同時に、自身の専門分野を変えるという大きな決断もしました。
これまでは組み込み系のシステム開発の技術を習得してきましたが、業務の中で「これからの時代はどの分野でもITの知識が必要になる」ことを感じていたことから、時代の変化に合わせて自身の専門分野をITに変更することにしたのです。当然、業務で使用する言語やツールは大きく変わりますし、Linux、Windowsサーバ、各種プログラム言語、データベースといったIT系の技術知識を1から学ぶ必要がありました。しかし、この先の自身のキャリアを考えて、挑戦することにしたのです。
そして、今も契約が続く、20年以上お世話になるお客様先への配属が決定しました。業務内容は、半導体テスト工程の解析システム開発。お客様先の半導体製造工程の中に、ウェハー上のチップやパッケージ後のチップが正しく動くかテストをする工程があり、測定データのデータベース化と、多様なビューアーやレポートによって各部署へデータを展開する、業務支援系システムの構築を担当することになったのです。
──専門分野を変え、新しい業務へ挑戦されたのですね。もう少し詳しく業務内容を教えてもらえますか?
[山崎氏]このお客様は自社で半導体の製造工程を持っていましたが、生産スキームによっては製造を外部に委託することもありました。外部に委託する場合でも、半導体製品の品質責任はこちらにありますので、委託先の企業と事前にデータのやり取りの仕組みを作らなくてはなりません。解析に必要なデータ、使用するフォーマット、受け取りのタイミング、データの格納先などの仕様を決め、システムに取り込むためのプログラムを組みます。半導体製品ごとに解析要件や開発要件が変わりますし、委託先も国内外にあり、とてもやりがいがあります。業務範囲も幅広く、企画や要件定義から担当することもあるので、プログラミングの力だけでなく、ニーズを聞き出すためのヒアリング力も磨くことができたと思います。また、前のお客様先で要件定義のフェーズに関わっていたことが役に立ち、専門分野は変わっても経験は活きると実感したものです。
──業務は何名かのチームで対応していたのでしょうか?
[山崎氏]現在は基本的には全て一人で対応しています。リーダーのポジションも兼ねているので全体的な視点で業務に詳しくなり、お客様から信頼を得ることができているのだと思います。
そして、業務を続ける中で、製品や業務内容も変化していきました。2016年頃からは生産ラインのシステム開発に参画するようになり、その翌年からは車載向け半導体製品の解析システムの構築に携わることになりました。特に車載向け半導体は品質基準も厳しく、人の命が関わる自動車向け製品の要件の多さ、難しさを実感しました。
──業務では半導体そのものの知識も必要だと思いますが、どのように習得されてきたのですか?
[山崎氏]業務に向き合う中で、「自分が携わる製品をもっと詳しく知りたい」という気持ちが芽生え、自分で学習するようになりました。自分の仕事のバックグラウンドをしっかり理解することで、仕事のやりがいや理解度が変わりますので、「調べる」「知る」という姿勢は常に心掛けています。
──長く半導体業界でシステム開発に携わっていますが、この先も半導体に関わる業務を希望されているのですか?
[山崎氏]今のお客様は機械学習やAIの導入にも力を入れています。車載品向け解析システムに機械学習、数理解析を適用し、機能拡充する計画があるので、また新たな技術の知見が得られそうです。まだしばらくは半導体業界で、自分の業務フェーズと知識を高めていきたいですね。
多様性のある働き方の実現と「つながりの文化」がメイテックフィルダーズの魅力
──ここからは、メイテックフィルダーズの魅力やエンジニアという職業に関するお考えを聞かせてください。まず、山崎さんはメイテックフィルダーズという会社の魅力をどう捉えていますか?
[山崎氏]一番の魅力は「多様性のある働き方ができる」ことですね。当社には、1社のお客様先で専門領域を追求する人もいれば、3年程のスパンでお客様先を移り、常に新しい製品や技術の知見を習得する人もいます。このように、エンジニア一人一人のキャリア志向を実現できる点が最大の魅力だと思います。
──社員同士の交流はいかがでしょうか?派遣という就業形態は、自社の社員同士で接する機会は少なくなりそうですが……
[山崎氏]当社にはエンジニア同士がつながり、互いが支え合う「つながりの文化」があり、その文化は「AD制度」という仕組みがつくりあげたのだと考えています。
ADとはエリアデザイナーの略で、各営業所に所属する人数に応じてエンジニアの中から数名が任命され、地域ごとの特色を出した研修を企画する役割を持つ人のことです。私も制度ができた1期目にその役割を担い、様々な研修・イベントを企画し、エンジニア同士のつながりをつくり、業界毎に異なる技術スキルの習得を支援してきました。今後は、特に若手エンジニアに、研修やイベントに参加する意義を理解してもらい、積極的にADを経験して、当社の「つながりの文化」を継承していってほしいと思います。
──エンジニア同士が自発的に支え合い、お互いの成長を支援するわけですね。会社からも様々なキャリア形成への支援があると思いますが、派遣という働き方において、会社からどんな支援があれば嬉しいと感じますか?
[山崎氏]エンジニアがそれぞれの目標に向かうためには、会社のサポートは必要不可欠です。ですから、エンジニアが今後のキャリアパスを考える際、自社で働き続けるエンジニアに向けて、将来の明確なキャリアパスを示してほしいですね。当社には様々な業界で活躍するベテランエンジニアが多数在籍していますから、その方たちと対談の場を設けたり、現役エンジニアで構成されたキャリアを検討する部署をつくったりしてみても面白いかもしれません。メイテックフィルダーズという会社の中で、派遣という働き方を通じて実現できるキャリアが明確になれば、それがエンジニアのモチベーションを高め、エンジニアと会社の成長を実現できるようになるという、良い循環が生まれるのではないでしょうか。メイテックフィルダーズは今期から新しい中期経営計画が始まり、会社の更なる進化に期待しているところです。
──ありがとうございます。それでは、山崎さんはものづくりに携わるエンジニアには、どんな素養やスキルが必要だと思いますか?
[山崎氏]コンピューターやインターネット、クラウド技術、AIなどが発達した現代では、エンジニアがバリバリとプログラムコードを書く必要もなく、ある程度出来上がったパッケージから部品を組み合わせるような開発手法に変わってきています。AIの技術が発達すれば、仕事の進め方はもっとドラスティックに変化するでしょう。こうした時代は、「自己解決力が前提となる時代」なのだろうなと考えています。
私がまだ20代だった頃は、インターネットもなく、パソコンも部署に数台という状況で、仕事を進めるために必要なツールや情報は会社にしかない、いわば「個人の力」の弱かった時代でした。しかし、現在は学生でもインターネットやクラウド、AIだって使える環境があり、個人が様々な情報を入手できます。こうした中でエンジニアに求められるのは、個人の解決力を高めることだと思います。今できることだけでなく、自分が「苦手だ」と思っていることでも解決する努力を続け、「自己解決力を高め続けること」が、専門分野に関係なく求められるのではないでしょうか。
──最後に、山崎さんの今後の目標を教えてください。
[山崎氏]当社には、ものづくりの最前線でエンジニアとして定年を迎えた、「生涯プロエンジニア」の先輩方がいらっしゃいます。その先輩方のように、お客様にとって価値のある技術サービスを提供し続けて、「生涯プロエンジニア」の一員になりたいですね。